2019年の株式市場におけるヒントが満載なので、昨年の政治・経済の動きについて重要な部分を考察し、2019年に余波を与えるであろうテーマを述べていきます。
日本銀行がEFT買いで保有する日経平均株価の簿価は1万8400円です。つまり、そのラインを割ってしまうと、日本円通貨の発行母体であり、政府の連結子会社でもある日本銀行が株式で含み損を抱えることになります。
既に公的年金を運用するGPIFは18兆円を超える含み損を計上しています。
アベノミクスにとって、日経平均株価が2万円を維持できることは、セーフティネットの条件ではなく、バイタルネット(命綱)の条件です。
2019年がどれだけ波乱に満ちた年となるかは、「日経平均株価2万円の攻防ライン」をどれだけ守れるかにかかっているのです。
Contents
- 1 トランプ政権が通商政策に本腰を入れて取り組み、本格的な貿易戦争へ突入
- 2 トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争は、1929年の大恐慌の再来となるのか?
- 3 2015年に起こった人民元安・チャイナショックが再現することはあるのか?
- 4 トランプ大統領は中間選挙まで対外強硬路線を貫く FRBへの非難でドル安に
- 5 いつもと違う目線でETF買いや下げ銘柄の空売りを検討するのも役立つ
- 6 アメリカの保護主義的な通商政策が、日本・中国の株安と人民元安を招く
- 7 日米間の貿易交渉は輸入牛肉の関税引き上げと自動車の関税引き上げが議題
- 8 本格的なお盆休みで日本の株式市場は閑散とした夏枯れ相場が続く
- 9 通貨リラの下落で欧州の株式や新興国の通貨が売られる 日本人も損失を拡大
- 10 インド・南アフリカ・アルゼンチンの通貨も過去最高レベルの安値を更新
- 11 お盆明けも閑散相場は続く 東証マザーズ指数は1000ポイントの大台を割れる
- 12 日本の地方銀行と不動産業に悪影響を与えたスルガ銀行とTATERUの不祥事
- 13 自民党総裁選で安倍首相が3選を果たす アベノミクスは最長3年間続くことに
- 14 臨時国会で自然災害の復旧やインバウンド需要への対応策が盛り込まれる
- 15 2019年年明けに日米は2国間で「物品貿易協定」(TAG)の関税交渉を進める
- 16 日米株式市場は急激に暗雲が漂って下落基調となる ドル安円高も嫌気される
- 17 IMFは貿易摩擦とアメリカの利上げが世界経済の見通しを下押しすると表明
- 18 2019年の日本は物品貿易協定(TAG)と消費増引き上げの決定でダブルパンチ
- 19 FANG銘柄が軒並み売られ、ハイテク成長株が目先の頂点をつけた可能性
- 20 不安材料は貿易戦争と長期金利上昇 成長株が多いナスダック総合指数に注意
- 21 公的年金を運用するGPIFは国内株式の運用枠が上限に近づいている!?
- 22 2025年に大阪の人工島・夢洲で万国博覧会が開催されることが決定!!
- 23 今後、数年間に渡って世界の景気見通しが良くなるための必須条件は3つある
- 24 米中貿易戦争は一時休戦へ 90日間の猶予で両国は妥協し合えるのか!?
- 25 原油安が長引くことで潤沢なオイルマネーが株式市場から撤退!?
- 26 日本の個人投資家の多くは、株式の含み損や損切りで、懐を痛めている
- 27 トランプ大統領は自ら仕掛けた貿易戦争が景気減速を招いていると認めた?
- 28 欧州では既に景気減速のリスクが数値・データによって表れ始めている
- 29 FRBのパウエル議長は機械的にバランスシートの圧縮を淡々と行うと表明!
- 30 2019年 アメリカは「ねじれ議会」の中で数々の難問に挑まなければならない
- 31 暴落相場の中でも人工知能銘柄のALBERTとチェンジは年初から2倍~10倍に
- 32 自動売買ツールや優秀なミラートレードを選択できるFX売買も一つの手段
2018年7月の相場環境について
トランプ政権が通商政策に本腰を入れて取り組み、本格的な貿易戦争へ突入
7月辺りから、いよいよトランプ大統領の通商政策が見せかけのディールではなく、本気であることに多くの人々が気付き始めました。
7月6日、アメリカと中国は、340億ドル分の輸入に対する追加関税を相互に発動し、米中貿易戦争がついに開始されました。
ライトハイザーUSTR代表は「中国との交渉は1年はかかる」と言及しており、この問題は安易に決着するものではないことは確実です。
トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争は、1929年の大恐慌の再来となるのか?
1929年のウォール街大暴落以降と同じように、各国が高関税を掛け合う「貿易戦争」に突入し、世界経済成長の下押しリスクが高まりました。
トランプ大統領は、中国の知的財産権侵害への制裁措置として、500億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課すと発表しました。
7月6日に340億ドル分の制裁関税を発動し、残りの160億ドル分は時期を検討するという内容です。
中国はすぐにアメリカ製品に同額の報復関税を課すと表明しています。
とはいえ、アメリカの雇用情勢は良好で、失業率が2.5%とほぼ完全雇用に近いレベルにあります。
アメリカ発の貿易摩擦激化が起こったとしても、しばらくの間は、数値やデータの範囲では堅調さが見込めるでしょう。
とはいえ、雰囲気や地合いで揺れる株式相場は、数値やデータだけで一概に結論付けられるものではないことを認識しておくべきです。
また、ちょっとしたボタンの掛け違えが、不安心理の増大につながり、株式市場の大暴落を招くことも考えられます。
こうした将来不安を募らせる悪材料が多い中ですが、
7月6日、ギャンブル等依存症対策基本法が成立
7月20日にはIR整備法(IR実施法)が成立
7月27日、特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)が公布
されることによって、日本の成長産業が育まれるための明るい光が差し込む運びとなりました。
IR整備法では、カジノを含む「統合型リゾート」(カジノIR)の設置が、全国で3ヵ所まで認められます。
2015年に起こった人民元安・チャイナショックが再現することはあるのか?
株式市場では、この米中貿易摩擦が世界経済、特に中国経済への悪影響が大きいという警戒感が強まりました。
特に、2015年8月の「チャイナ・ショック」の再現を懸念しています。
当時は、輸出拡大のための人民元の切り下げと受けとめられたことが、世界的株安へと波及したきっかけでした。
7月、人民元相場では、一時1ドル=6.6588元と、約8カ月ぶりの元安・ドル高水準を付けました。
中国政府が発表した6月の製造業PMIは51.5と、前月から0.4ポイント低下して市場予想を下回り、景気減速の陰りが見え始めました。
(出典:TradingView)
2018年11月30日には1ドル=6.9649元というチャイナショック以来と同水準の人民元安となっています。
7月5日、こうした中で中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げを決定しました。
アメリカの対中追加関税の発動を7月6日に控えているため、アメリカへの報復措置として中国が通貨安誘導を行っているという見方が出てきています。
米中貿易摩擦は、次のステージとして通貨安競争・通貨戦争へと発展していく危険性が高まりました。
それは、
米中貿易摩擦激化 → 中国の実体経済悪化 → 関税引き上げに限界がある中国が報復措置を停止→代わりに人民元安を積極的に誘導 → 中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げを発表 → 2015年8月のチャイナショックが再来
という流れを意味しています。
トランプ大統領は中間選挙まで対外強硬路線を貫く FRBへの非難でドル安に
トランプ大統領は、11月6日の中間選挙を終えるまでは支持基盤のためにも必ず対外強硬路線を続けるので、貿易摩擦の問題が解決することはないと言えます。
7月19日、アメリカ国内でも、トランプ大統領はFRBの利上げ方針を「好ましくない」と批判し、「金融引き締めは全てを損なう」とツイッターでコメントしました。
さらに、中国と欧州に対して「通貨を操作し、金利を低くしている」とツイッターでコメントし、「中国の輸入品全てに関税を課す準備をしている」とTV放送の場で語りました。
こうした発言やツイッターのコメントを受けて、為替市場では、ドル高期待が大きく後退しました。
いつもと違う目線でETF買いや下げ銘柄の空売りを検討するのも役立つ
こうした場面での株式の買い方は、PERやPBRといった指標による値頃感ではなく、相場が終焉するかのような大暴落、セリングクライマックスの状況でしか、買い向かわない方が望ましいでしょう。
7月2日時点における信用買いの評価損益率は-21.16%となっています。
信用買いの-20%超は「追証」がかなり大量に発生するレベルなので投売りが出やすい水準だと覚えておきましょう。
あるいは、日経平均株価に連動するETFを空売りするか、インバース(逆・反対を意味し、日経平均の価格が下がると上がるように設計されている)型のETFを購入することをお勧めします。
完全に下げきったと間違いなく判断できた場合は、日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)、日経平均ブル2倍上場投信 (1579)を買い、下げトレンドの相場が続くと判断する場合は、日経平均ベア上場投信(1580)や日経インバースETF(1571)を買って、株式相場の下落に備えると良いでしょう。
ベアやインバースは、日経平均が下がれば下がるほど利益が出るようにできています。
また、ちょっとした冒険をしてみたい人は、新興市場のNEXT NOTES 東証マザーズETF(2516)、マザーズ・コア上場投信 (1563)を下げきった場面で買いを入れてみるとか、逆に上値だと判断したところで空売りするのも一つの方法です。
また、完全に市場が崩壊していると読み切った場合は、国際のETF VIX短期先物指数 (1552)を買うというのもあるでしょう。
しかし、国際のETF VIX短期先物指数 (1552)は、ほんの数日でも日経平均やアメリカ株式の上昇が続くと、損失がとんでもなく膨らむ可能性があるので注意が必要です。
この激しく乱高下する相場にあって、個別銘柄では、高齢者向け配食サービスを運営していシルバーライフ(東証マザーズ:9262)が、安定した値動きを見せています。
(出典:ヤフーファイナンス)
シルバーライフが堅調なのは、新しいビジネスモデルでブルーオーシャン(競合相手がいない)で事業を営んでいるからです。そういう銘柄を見つけていくのも良い方法と言えるでしょう。
7月30日、31日開催に開催された日銀の金融政策決定会合では、次のような内容が伝えられました。
日銀にできることは全てやり尽くし、物価目標の2%達成ははっきり申し上げて無理だと言えます。
ETF及びJ-REITは、保有残高がそれぞれ年間約6兆円と年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行いますが、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動し得るとしています。
2018年8月の相場環境について
8月1日、アメリカは2000億ドル分の中国製品を対象とした対中国制裁の第3弾に関し、追加する関税率の10%から25%への引き上げ検討を発表しました。
関税の制裁対象は第1~3弾を合わせて2500億ドルとなり、中国からの年間輸入総額の約5000億ドルの約50%に達しています。
アメリカの保護主義的な通商政策が、日本・中国の株安と人民元安を招く
日本の株式市場では、主力の大型株であっても、アメリカの保護主義的な通商政策によって、不透明感が漂い、値動きの悪い状態が続きました。
その背景には、やはり中国の株式市場と人民元相場の不透明感があります。
8月6日、上海総合指数は2705ポイントと年初来安値を更新しました。
2015~2016年の「人民元ショック」の安値となった2655ポイントに限りなく近づいています。
8月3日、中国政府は、アメリカからの約600億ドル分の輸入品に追加関税をかける報復措置を発表しました。
これを受けて、大幅に人民元安が進み、中国からの資本流出懸念が強まることとなりました。
その対策として、中国人民銀行(中央銀行)は、「将来に元を売って外貨を買う」という為替予約を扱う銀行に、契約額の20%を「危険準備金」として預けるよう要求したのです。
ところが、それで元安がストップするという保証はなく、上海総合指数と同じく人民元にも下落基調が続いています。
日米間の貿易交渉は輸入牛肉の関税引き上げと自動車の関税引き上げが議題
8月2日、アメリカの株式市場では、ハイテクの代表格であるアップルの時価総額が1兆ドルを突破しました。
8月9日、日本とアメリカの両政府は、ワシントンで閣僚級の貿易協議の会合を開きました。
日本の茂木敏充経済再生担当大臣とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が通商問題を協議し、アメリカ側は、日米間のFTAの交渉入りに意欲を示しました。
アメリカは、FTA交渉によって輸入牛肉の関税引き下げを要求する予定です。
この協議では、日米FTA交渉だけでなく、トランプ大統領が検討している日本から輸出する自動車関税の引き上げについても重要な課題となりました。
本格的なお盆休みで日本の株式市場は閑散とした夏枯れ相場が続く
8月11日から本格的なお盆休みとなり、外国人投資家は夏の長期休暇、国内の機関投資家も休暇入りとなります。
そのため、株式市場は閑散とした夏枯れ相場が続き、日経平均は2万1500~2万3000円のボックス相場が続きました。
ところが、このお盆休みの間に、トルコによる米国人拘束問題が発生し、アメリカとトルコの関係が悪化したのです。
通貨リラの下落で欧州の株式や新興国の通貨が売られる 日本人も損失を拡大
トルコの通貨であるリラは急落し、欧州の株式や新興国の通貨が売られるという事態に発展しました。
株式安・新興国の通貨安・新興国の債券・投資信託安となり、普段から投資の売買にアクティブではない一般的な日本人の多くも損失を拡大させる結果となりました。
高金利通貨であるトルコリラは、FX取引の対象としての非常に人気が高い通貨です。
日本の個人投資家は、証券会社などの勧めもあって、トルコリラ建て債券や投資信託の購入が増えていた矢先の出来事でした。
FX取引では、個人投資家のロスカットに伴うトルコリラ売りと円買い戻しの動きが際立ちました。
こうしたトルコリラ通貨の安値更新は円換算の価値下落によって、高い金利を加えても、購入した債券や投資信託で含み損を抱える事態となりました。
こうして、
トルコリラ急落 → 他の新興国も資金流出 → 他の新興国通貨も下落
という悪循環に陥ってしまいました。
インド・南アフリカ・アルゼンチンの通貨も過去最高レベルの安値を更新
8月13日、インドの通貨ルピーが7月末に付けた過去最安値をさらに更新しました。
また、南アフリカの通貨ランドは2年2カ月ぶりの水準に下落しています。
アルゼンチンでは、通貨ペソ売りの加速によって対ドルで史上最安値を更新し、アルゼンチン中央銀行が政策金利を5%引き上げ、年45%にすると発表しました。
このようにして、トルコショックをきっかけに、2018年の新興国における通貨や実体経済はとても不透明な情勢となりました。
特に、GDP(国内総生産)に対する対外債務の比率が高く、経常収支が赤字の新興国では、通貨安の傾向が強まり、関税の引き上げ競争を行うことで、アメリカとの関係が悪化する中国の景気先行きが不安視され始めました。
こうした新興国の不安定さを考慮して、リスクオフのモードに入った投資家達が、少しでも危険を回避しようとして、安全資産であるアメリカ国債及び日本の通貨である円を買う動きが活発になりました。
そのことが影響して、為替市場ではドル安・円高が鮮明となり、日本株の下落要因あるいは上値圧迫要因となりました。
8月20日、トランプ大統領は、「中国との貿易戦争を続ける期間は無期限だ」と表明し、米中の事務レベルの協議について大きな進展を期待していないと切り捨てました。
アメリカが仕掛けた貿易戦争によって、中国で大幅な株安や人民元安が起こっており、相当な損失とダメージを被っています。
そのため、両国の事務方の話し合いだけで米中貿易摩擦が和らぐというのは、楽観的過ぎます。
お盆明けも閑散相場は続く 東証マザーズ指数は1000ポイントの大台を割れる
8月20日、トルコに端を発する不透明な外部環境の影響で、東証1部の売買代金は今年2番目の少なさとなりました。
個人投資家・機関投資家・海外投資家を問わず。多くの投資家が市場に参加せず、様子見をしているからです。
海外のネガティブな外部環境が目に見えて改善しないため、こうした閑散相場は続くこととなりました。
8月20日の東証マザーズ指数の終値は951ポイントで、年初来安値は8月16日の932ポイントです。
このように、年初来の底値圏で低迷を続けているのが明るい兆しの見えない新興市場の実状となりました。
東証マザーズ指数が1000ポイントの大台を割れて評価損を抱えている個人投資家が多数いることは、下値圧力になっても、上値に向かう資金余力と楽観的な見方が少ないことを示しています。
日経平均株価は、2万3000円の分厚い壁に阻まれ続け、その上を越えていくことが難しくなっています。
8月30日、トランプ大統領が「中国製品2000億ドル相当に対する関税を発動する」と述べたと報道がありました。
これによって、米中両国の通商摩擦はさらに激しい厳しさを増すと指摘する声も上がっています。
日本の地方銀行と不動産業に悪影響を与えたスルガ銀行とTATERUの不祥事
8月30日、スルガ銀行はシェアハウスを含む投資用不動産向けの不適切な融資が横行していた問題の責任を取って、3人全員の代表取締役が辞任する人事を固めたと報道されました。
8月31日、さらに加えて、TATERUが「当社従業員が顧客から提供を受けた預金残高データを改ざんし、実際より多く見せて西京銀行に提出し、融資審査を通りやすくしていた。」と日本経済新聞が報道していますが、そのような事実があることを公けに認めました。
この二つの企業のスキャンダルは、不動産投資にまつわる不正融資問題という形で、地方銀行や不動産業界への悪影響が心配される事態になっています。
この発表の後、TATERUの株式には大量の売り注文が殺到し、同業他社の株価も連れ安することになりました。
2018年9月の相場環境について
9月3日、上海総合指数の終値は2720ポイントとなり、心理的な節目の2700ポイントを下回る場面がありました。
トランプ大統領による中国製品への追加関税発動に対する警戒感が高まり、人民元安・ドル高であることも嫌気されました。
米中貿易戦争の終わる糸口を掴めないと、上海総合指数の底入れは見えない展開が続いています。
その一方で、日本の株式市場は上海総合指数に過敏な反応をしなくなりました。
この現象は、日本とアメリカ、あるいは日本と中国との関係の密接さを反映している可能性があります。
9月4日、ECサイト、Webサービス会社の代表格であるアマゾン・ドット・コムの時価総額が1兆ドルを突破しました。
自民党総裁選で安倍首相が3選を果たす アベノミクスは最長3年間続くことに
9月20日に投開票が行われた自民党総裁選では、安倍首相が見事に3選を果たしました。
任期は2021年9月までの3年間であり、アベノミクスは最長で3年間は続くことが確定したのです。
もし、安倍首相が森友学園や加計学園の問題で退任を余儀なくされていたら、アベノミクスは終焉し、再び強烈なデフレ経済に逆戻りしていた危険性はあります。
株価の大幅安だけに留まらず、深刻な不況が日本中を襲っていたことでしょう。
とは言え、安倍政権は、日銀の金融緩和に頼りっぱなしで、3本の矢のうち、1本しか使っていません。
残り2本の財政出動と経済成長戦略がなかなか見えてこないのです。
9月25日、日本とアメリカの閣僚級の貿易協議(FFR)が、ニューヨーク市内のホテルで開かれています。
トランプ大統領は対日貿易赤字に強い不満を示しています。会談の結果、日米の貿易を促進する方策で概ね一致しました。
アメリカは、農産品の市場開放を求めており、米国産牛肉に課す関税の引き下げを要望しています。
日本としては自由貿易協定(FTA)の体裁はとらない方針で、米国が求める農産品の関税下げはTPPで合意した水準までが限度と主張しました。
臨時国会で自然災害の復旧やインバウンド需要への対応策が盛り込まれる
臨時国会では、自然災害の復旧作業対応としての2018年度補正予算案成立を最優先に行いました。
安倍首相は、台風や地震などの災害頻発を受け、道路など重要インフラの点検結果と対策を11月末に取りまとめるように関係閣僚に指示しています。
台風・豪雨・地震など自然災害の多い日本において、国土強靭化政策を改めて練り直すこととなりました。
観光立国に向けた推進会議では「外国人が安心して日本を旅行できるよう万全の対策を講じたい」と述べており、インバウンド需要に対する具体的な対応策が盛り込まれました。
9月第3週になると、海外投資家は日本株を大幅に買い越しました。現物の買い越し額は2770億円で、日経平均先物とTOPIX先物を合算した買い越し額は1兆486億円と、合計で1兆3256億円の買い越しを行いました。
9月の日銀短観では、大企業製造業の2018年度の想定為替想定レートは1ドル107円40銭と発表されました。
・対ドルで1円の円高になると、主要企業の経常利益は0.5%程度押し下げられます。
・対ドルで1円の円安になると、主要企業の経常利益は0.5%程度押し上げられます。
2019年年明けに日米は2国間で「物品貿易協定」(TAG)の関税交渉を進める
9月26日、安倍晋三首相はトランプ米大統領との日米首脳会談で、2国間で関税交渉を始める「物品貿易協定」(TAG)で合意しました。
協議中は米国が検討している自動車への追加関税は発動しないことも確認されています。
2019年の年明けには、本格的な交渉が開始されます。
物品貿易協定(TAG・Trade Agreement on goods)は、複数国の間でモノの輸出入にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定のことです。
物品貿易協定(TAG)は農産品や工業用品など幅広い貿易品目が交渉対象になりますが、日本政府としては、関税だけでなく、「投資やサービスの自由化」にも範囲が及ぶ自由貿易協定(FTA)とは別の協定だとの立場を取っています。
実際に、安倍晋三首相は「TAG交渉はこれまで日本が結んできた包括的なFTAとは全く異なる」と説明しています。
アメリカとカナダは、NAFTA再交渉で妥結し、メキシコを含む3カ国枠組みの解体という「最悪の事態」が回避されました。
中国を除いては、米国発の貿易摩擦は沈静化に向かっています。
同じく9月26日、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、「今年に入ってからの経済は予想より強い。雇用、賃金、物価の全てが好ましい状況で、堅調なアメリカ経済は継続するだろう」と述べました。
9月25日~26日のFOMC後の利上げ(3カ月ぶりに利上げを行う)については、12月のFOMCで政策金利を2.25~2.50%に0.25%引き上げる見通しとなりました。
2019年は3回の利上げ、2020年は1回、2021年はゼロを想定しています。
2018年は、大型減税がアメリカ経済の好調を維持する効果をもたらしました。
2018年10月の相場環境について
10月2日、日経平均株価は2万4448.07円で完全に天井を付けて、10月15日には2万2261.92円まで下落し約2200円の下落幅となりました。
日米株式市場は急激に暗雲が漂って下落基調となる ドル安円高も嫌気される
9月7日の2万2172円を起点とすると、10月2日までの上昇幅が全て帳消しになったのと同じ意味を持ちます。
10月に入っての下落した原因は、
1.米長期金利の急上昇(3.248%)を背景とした米国株の急落
2.外国為替市場でドル安円高が進行
したことでした。
長期金利が3.248%まで上昇したことで、アメリカの景気を冷え込ませるという不安が広がりました。
また、アメリカ長期金利の上昇は、アメリカのハイテク系IT株の高株価を許容しにくいため、ハイテク系IT株とドルが同時に売られました。
IMFは貿易摩擦とアメリカの利上げが世界経済の見通しを下押しすると表明
10月9日、IMF(国際通貨基金)はアメリカ発の貿易摩擦とアメリカの利上げが、過大債務を抱える新興国景気を下押しするという見解を理由に、世界経済見通しを2年ぶりに下方修正したのです。
こうした材料が、日米の株価の下落につながりました。
2019年の日本は物品貿易協定(TAG)と消費増引き上げの決定でダブルパンチ
10月13日、ムニューシン財務長官は、日本との物品貿易協定(TAG)交渉に関して、通貨安誘導を封じる為替条項を日本に求める考えを提示しています。
10月15日、臨時国会の中で、安倍晋三首相は「法律に定められた通り、2019年10月1日に消費税を8%から10%へ引き上げる」と表明しました。
これらは、マネー経済と実体経済の両面でダブルパンチとなります。
こうしたネガティブな材料を受けて日本の株式市場では、
1.為替政策や金融政策がアメリカに束縛される
2.消費増税は日本経済を失速させる
という2つの不安が強まり、日本株売りを加速させる要素となりました。
こうした状況は、国内外の政治要因による株価の下落であり、しかも民間企業の技術開発や営業努力の範囲を超えた悪材料なので、株取引を行うべきではありません。
それは、暴風や竜巻の中を防護服を着ずに目的地へ散歩しにいくようなもので、何ら得られるものがないからです。できれば外出は控えるべき時期と言えます。
投資家であれば、株式の売買を決して行わず、証券口座の中で投資資金を預かり金(現金)にしておき、相場変動の影響を全く受けないようにすることが、一番の戦略だと言えます。
もしまだ持ち株があったとしても、なるべく早く損切り撤退をして、預かり金(現金)に変えるのが一番の得策となります。
少なくとも、国内外の政治要因の悪化で株価が下落しているのに、「塩漬けにして株価が戻るのを待つ」という発想は控えるべきです。
FANG銘柄が軒並み売られ、ハイテク成長株が目先の頂点をつけた可能性
10月24日、ナスダック総合株価指数は4.4%の下落幅となり今年最大を記録しました。
アマゾン株は9月4日に節目の1兆ドルを突破した後、売上高見通しが振るわず、成長鈍化への懸念が強まって、下落基調が続きました
こうしたアマゾン株の値動きは他のIT関連株にも波及しました。
フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルが親会社のアルファベットは、FANG銘柄と呼ばれていますが、軒並み大幅に下落しました。
GAFA銘柄は「 Google 」「Apple」「 Facebook 」「Amazon」の頭文字を集めた呼称ですが、こちらもネットフリックスとアップルが違うだけで、同じくグロース系IT株であり。よく似ている銘柄構成です。
10月22日、ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは、同社株を10万5868株売却しました。
過去3カ月間でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、自社株を約370万株売却しています。
企業のCEOが自社株を売るのは、現在の株価を割高と判断し、現金化を急いでいることを周囲に知らせているのと同じ意味を持ちます。
非常にネガティブな兆候であり、ひょっとすると歴史的な天井を打った可能性も否定できません。
今後のFANG株の行方に注目していく必要があります。
長期金利が低い状態や長期金利が低下している場面では、ハイテク系IT株に代表される成長株(グロース株)の高PERや高PBRを気にしなくても特に問題にはならないでしょう。
ところが、9月中旬以降になってからはアメリカ長期金利が上昇基調を強めました。
成長株(グロース株)は、高い成長率を前提とした将来の利益を織り込んでいます。
その一方で、金利が上昇する場面では、熟練した投資家は低PER・低PBRの割安株(バリュー株)を好んで選ぶ傾向があります。
成長株(グロース株)へ投資資金を集中させることは、今後は控えておくべきでしょう。
バリュー株(割安株)へ資金が流入し始めているとすれば、見直し買いも検討すべき時期に来ています。
不安材料は貿易戦争と長期金利上昇 成長株が多いナスダック総合指数に注意
アメリカ経済の不安材料は、貿易戦争だけではありません。長期金利上昇が急ピッチになればなる程、高PER・高PBRの成長株からの資金が流出し、低PER・低PBRのバリュー株(割安株)への資金が移動するという展開が想定されます。
ナスダック総合株価指数は、成長株の比率が高く、思わぬ下落を続ける可能性があります。
10月29日、日経ジャスダック平均株価と東証マザーズ指数は、両方共に連日で年初来安値を更新しました。
このことは、アメリカと同様に人気の高い成長株(グロース株)から人気の低いバリュー株(割安株)に資金が移動し始めるシグナルかもしれません。
もし、アメリカのハイテク株売りだけでなく、アメリカ株全体が一段と下落するようであれば、VIX指数の急上昇が起こり、日経平均株価の2万円割れを起こす要因となります。
10月30日以降、日経平均が上昇しましたが、日銀のETF買いの他に、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が買い向かったという観測が出ています。
2018年11月の相場環境について
11月2日、VIX指数が20を下回ったことが買い材料となり、トランプ大統領が米中貿易合意に向けた草案作りを始めるよう関係閣僚に指示したという報道が好感されました。
その結果、売り方の買い戻しが加速し、日経平均株価の上昇幅が拡大しました。
とは言え、11月までに決算発表を終えた上場企業641社を集計した結果、純利益の前年同期に比べた増加率は、7~9月期は0.5%と急減速しています。
これは非常にネガティブな材料だと捉えるべきです。
もし、3年ぶりの減益に転じることを織り込むようであれば、株式市場の下落基調は続くことになりそうです。
11月6日、アメリカ中間選挙は、与党である共和党が上院の過半数を維持し、下院は民主党が過半数を奪還しました。
選挙結果は、アメリカ社会が完全に真っ二つに分断されているという現実を表す内容となりました。
特に白人労働者と移民・女性の考え方、若年層と中高年層の価値観は顕著に異なります。
上院と下院で多数派が異なる「ねじれ議会」になったことで、2019年1月以降、トランプ政権と民主党が対立するか、お互いに協調してインフラ投資を加速できるかが大きな焦点となりそうです。
ハイテク企業の節税策を問題視する動きが世界で広がる最中、イギリス政府は新たなデジタル課税を2020年4月から導入すると発表しました。
11月4日、トランプ大統領もネットメディアに公開したインタビューで、アマゾンやアルファベット、フェイスブックに対して「独占禁止法の適用を真剣に検討している」と語りました。
規制面で先行するEU(欧州連合)に同調し、日本政府も、検索やSNS、ネットショッピングなどのサービスを展開するIT企業である「プラットフォーマ」に対する規制を強化すると報道されています。
市場の寡占が進めば、公正な競争環境が歪められるので、政府による「独占の禁止」は、経済全体にとっては必要なことです。
しかし、規制対象となる企業にとっては、様々な負担が増るばかりで、競争力が削がれます。
公的年金を運用するGPIFは国内株式の運用枠が上限に近づいている!?
現時点において、公的年金を運用するGPIFは2万円割れを防ぐために買い支えを行える約160兆円の資金力があります。
ただし、GPIFは、国内株式の運用比率の基本である25%に近づいています。とはいえ、国内株式運用は25%の上下9%まで乖離(かいり)が許容範囲となっています。
このため、国内株式への投資について25%に達したらもう買わないということではありません。
日銀やGPIFの買い支えが入ったとしても、2万2537円以上の水準を安定的に上回ることは、外部環境の改善がない限り難しいことに変わりありません。
今後、日本の独自要因だけで日経平均株価が2万4448円を超える可能性は低いということになります。
逆に、2万0347円を割り込まなければ、極端な下げ相場も来ないという結論に至ります。
安倍首相が、消費増税を撤回しない限り、アベノミクス相場の復活はないでしょう。
やはり、頼みの綱は日銀による追加の金融緩和によって、ETFの購入枠を増やすことだと考えています。日経平均や東証株価指数(TOPIX)だけでなく、マザーズ指数に連動するEFTの購入をも検討して欲しいものです。
そうすれば、個人投資家の多い新興市場に活気が戻る可能性が出てくるはずです。
2025年に大阪の人工島・夢洲で万国博覧会が開催されることが決定!!
11月の明るい話題としては、2025年の大阪万博開催が決定したことです。
万博の経済効果は2兆円程度と見込まれており、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の景気の下支えとなることが期待されます。
今後、数年間に渡って世界の景気見通しが良くなるための必須条件は3つある
今後、世界の景気見通しが良くなる条件は、
1.アメリカ長期金利の低下、あるいはFRBが利上げを止めると表明すること(2019年はOK)
2.米中貿易戦争で両国が妥協点を探り、完全合意に達すること
3.将来不安が収まり、原油価格の下落が止まること
の3つが同時に実現することです。
2018年12月の相場環境について
12月3日、アメリカ10年物国債利回りは2.97%と、9月中旬以来の低水準となりました。
その背景には、11月28日にパウエルFRB議長が「政策金利は景気に中立とされる水準をわずかに下回っている」と発言したことがあります。
さらに、11月のFOMC議事要旨において、2019年以降の利上げペースが鈍る可能性が示唆されました。
これにより、FRBの早期利上げ打ち止め観測が出ることになりました。
アメリカ長期金利の上昇が、高PERの成長株・IT関連株の売り要因であっただけに、アメリカの長期金利低下はポジティブ材料と言えます。
米中貿易戦争は一時休戦へ 90日間の猶予で両国は妥協し合えるのか!?
12月1日に開かれた米中首脳会談では、2019年の年明けに予定していた中国製品への追加関税引き上げを90日間猶予すると決めました。
アメリカは、この協議に関して90日以内という期限を区切り、合意できなければ関税を引き上げる方針です。
それが意味するのは、貿易戦争の一時休戦に過ぎず、知的財産権の侵害や中国へ進出した企業に対する技術移転の強要があることから、アメリカは一歩も引かない姿勢を見せています。
原油安が長引くことで潤沢なオイルマネーが株式市場から撤退!?
2018年の全体を通しては、WTI原油先物価格は25%値下がりしています。
12月3日、WTI原油先物価格は1バレル=52.95ドルとなり、下落基調が横ばいに変わりました。
これは、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子が12月1日の会談で協調減産の延長で合意したと伝わったことが影響しています。
主要産油国が協調減産で折り合えば、需給が引き締まり、価格下落に歯止めが掛かるという思惑です。
日本やアメリカの株式市場が恐れていたのは、
原油安 → 産油国の財政悪化 → 産油国が保有株式を売却して財政悪化を補填
という悪循環でした。
これが回避されると、原油先物価格にとってプラス材料になります。
【1月3日更新】原油によって大きな収益を上げているロシアとサウジアラビアにとって、2019年は逆風で始まる相場の動きとなりました。
WTI原油先物価格は1バレル=44ドル97セントと低い水準にあり、2018年10月から一貫して下落しています。
世界経済の景気減速と新興国を中心とする原油の供給過剰リスクへの懸念が主な理由です。
(出典:楽天証券 WTI原油先物価格チャート)
日本の個人投資家の多くは、株式の含み損や損切りで、懐を痛めている
12月3日、「師走相場」に突入し、日経平均株価が7連騰していても、個人投資家にとっての実感が薄く、利益を思うように出せていないという実状があります。
その理由としては、
・10月の急落相場で多数の退場者が出ており、個人投資家の絶対数が大幅に減少したこと
・10月相場で退場は免れた人も、資産の傷が大きく癒えていない個人投資家が多いこと
があります。
日経平均株価は上がっても個別銘柄の株価の戻りが鈍いのです。
中期あるいは長期的には下落トレンドが継続しており、短期的な買い上がりがあっても、それは単なる一過性の減少となる可能性が高いと言えます。
(出典:楽天証券 左は東証マザーズ指数 右は日経ジャスダック平均)
2018年12月28日時点で、東証マザーズ指数は節目の1000ポイントを大きく割れて830ポイント以下になっており、日経ジャスダック平均株価は3250円を下回っています。
中国の通信機器最大手、ファーウェイ(華為技術)の副会長が、米国の要請を受けて、カナダ当局に逮捕されました。
さらに、ナバロ大統領補佐官が、90日間の猶予期間中に中国との貿易問題が解決しなかった場合、関税を直ちに引き上げる考えを表明しました。
加えて、米連邦司法当局は、中国政府系ハッカーが高度なサイバー攻撃を仕掛けたとして、刑事訴追を公表すると報道されました。
【重要!】ファーウェイ問題は、
1.次世代高速通信(5G)における「アメリカ VS 中国」の覇権争いである
2.サイバー攻撃によって日本・アメリカ・欧州などの国益を損なう危険性が付随している
という非常に重要なテーマが含まれています。
このことは、東京オリンピックを控えた日本にとっても決して他人事ではありません。
アメリカと中国の貿易戦争及びサイバー分野における覇権争いは、一時休戦どころか、ますます対立がが深まっています。
2019年もこの貿易戦争とサイバー覇権争いは、日経平均・個別銘柄共々に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
日本株も、米国株も、投資信託も全てが評価損になっている個人投資家が多く、さらに、人気の高かったソフトバンクのIPOは公開価格1500円に対して初値が1463円で、その後も1358円まで値を下げています。
ソフトバンクのIPOで売り出される株式の総額は約2兆6460億円で、その多くを国内の個人投資家が購入しました。
多くの個人投資家は損切りができず、含み損の持ち株を塩漬けにしているという声をよく聞きます。
そのため、可能な限り保有株式を減らし、安心して年末年始を過ごしたいと願う個人投資家が多いのではないかと推察しています。
日本の株式市場を取り巻く国内外の環境要因は日々悪化しています。
12月の日銀短観では、
・大企業製造業DIがプラス19(9月調査から横ばい)
・3ヶ月後は大企業製造業DIがプラス15と悪化する見通し
となっています。
もちろん、悪化の原因は、米中貿易戦争とサイバー覇権を巡る争いに対する警戒感です。
日本政府は2019年度の経済成長見通しにおいて、実質GDPの伸び率を7月の1.5%から1.3%に下方修正しました。
2018年度成長率見通しは、7月の1.5%から大幅下方修正し0.9%としました。
こんな状況下で、消費増税などできる訳がありません。
景気減速の足音を素直に政府・閣僚・財務省が認めて、消費増税の凍結を表明すべきです。
中国と欧州の経済はとりわけ不安定で先行きが暗い見通ししかありません。
トランプ大統領は自ら仕掛けた貿易戦争が景気減速を招いていると認めた?
12月14日、中国に対して、トランプ大統領が、「我々の貿易戦争が原因だ」とツイッターでコメントしたように、米中貿易戦争の影響で経済成長の鈍化が鮮明となっています。
中国では、
・11月の小売売上高は2003年5月の4.3%以来15年半ぶりの低い伸び率
・11月の工業生産高は増加率が10月の5.9%から低下
という具合に数値やデータのレベルではっきりと景気減速の兆候が出ています。
(出典:楽天証券 上海総合指数)
【2019年1月3日更新】上海総合指数は2018年初めの3600ポイント近辺から完全な下落トレンドを形成し、8月の2655ポイントを割り込んで2019年1月3日には2461ポイントとなっており、下値を模索する展開が続いています。
頼みの綱は、中国共産党による内需拡大方針がどれだけ大きな成果を出せるかです。
とは言え、最終的には、米中貿易協議が中国経済の先行きを決定付けることになるでしょう。
欧州では既に景気減速のリスクが数値・データによって表れ始めている
12月13日、欧州において、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和の年内終了を決めました。
しかし、ドラギECB総裁は「おおむね均衡しているが、リスクのバランスは下方に傾きつつある」と発言し、欧州経済の先行きを懸念しています。
EU(欧州連合)では、
・12月のユーロ圏のPMI速報値は合成指数が前月比で1.4ポイント低下し51.3
・ドイツのPMI速報値は52.2と4年ぶりの低水準
・フランスは大規模デモの影響を受けて49.3と50(好不況の分岐点)を割り込む
と芳しくない状況です。
日本や中国に限らず、欧州においても、投資家のリスク回避的な動きが加速していることは間違いありません。
FRBのパウエル議長は機械的にバランスシートの圧縮を淡々と行うと表明!
12月18日~19日のアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)では、2018年4回目の利上げが行われました。
FRBのパウエル議長とトランプ大統領は対立を深め、大統領の権限で議長を解任するとまで言い出す始末です。(中央銀行には独立性が尊重されるため、実際には出来ないはずです。)
トランプ大統領は、
The only problem our economy has is the Fed. They don’t have a feel for the Market, they don’t understand necessary Trade Wars or Strong Dollars or even Democrat Shutdowns over Borders. The Fed is like a powerful golfer who can’t score because he has no touch - he can’t putt!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年12月24日
日本語訳:我々の経済の唯一の問題は中央銀行制度理事会だ。彼らは金融市場の状況を掴みとれず、貿易戦争、強いドルを理解せず、更には連邦政府閉鎖や国境の安全も理解しない。筋力のあるゴルファーだが、良いスコアが出せないゴルファーだ。それはグリーンで上手くボールを叩けないからだ。
とツイッターでコメントしました。
とにかく、危険な相場には近づかないように努めましょう。持ち株は換金売りして全て現金(安全資産)にし、米中対立が緩和され、アメリカ長期金利が落ち着き、FRB とトランプ政権が親和的な対話が出来るようになるまでは、しばらく様子見をするのが一番だと考えています。
2018年は、初立会から株価が勢い良く上昇し、日経平均株価が24000円を超える展開となっていたのに、終値が2万0014円(前日比-62.85)と、アベノミクスが始まって以来、最悪のムードで大納会を迎えました。
アメリカの株式市場も、数百ドル規模の暴落が連日で続いており、外国為替市場は12月29日時点で 1ドル=110.26円までドル安・円高が進行しています。
安全資産を求める「リスクオフ」で株式の換金売り、あるいは「リスク回避」の円買い、アメリカ国債を買う動きが顕著に表れています。
2019年 アメリカは「ねじれ議会」の中で数々の難問に挑まなければならない
2018年の中間選挙の結果を受けて、2019年1月からのアメリカ議会は、上院の多数派が共和党、下院の多数派が民主党という「ねじれ議会」になります。
そのため、
1.暫定予算の期限が再び切れる2月
2.国債発行額の上限を定めた債務上限の期限の3月
の2つの時期を鑑みても、株式市場・外国為替市場は、トランプ政権の政策停滞リスクに敏感にならざるを得ません。
12月24日、民主党の議会指導部は、政府機関の一部閉鎖に関して「トランプ大統領と解決策を見つけるのは困難だ」という声明を出しました。
この背景には、メキシコ国境の壁を巡る予算案において、共和党のトランプ大統領と、民主党の議会指導部の大きな意見の違いが横たわっています。
【2019年1月1日更新】
民主党の主張に呼応するかのように、トランプ大統領は、年明けの2019年1月1日になって
The Democrats, much as I suspected, have allocated no money for a new Wall. So imaginative! The problem is, without a Wall there can be no real Border Security - and our Country must finally have a Strong and Secure Southern Border!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年1月1日
【日本語訳】私が予想した通り、民主党は国境の壁建設の予算を全く取らなかった。あまりにも予測通りだ!問題は、壁なしでは本当の国境の安全が保てないということだ。メキシコ国境においては、強固な安全が必要なのだ
とツイッターでコメントしています。
アメリカではトランプ大統領がメキシコとの国境沿いの壁の建設費を予算案に盛り込むよう求めたことで与野党が対立し、政府機関の一部が閉鎖されたまま新年を迎えることになりました。
12月22日から政府機関の一部が閉鎖され、閉鎖から10日目となっても、政府機関の一部が閉鎖されたまま新年を迎えることになりました。
トランプ大統領はこの問題に対応するため、「私は大統領執務室にいる。民主党は休暇先から戻り、メキシコとの国境沿いの壁の建設も含んだ予算案に必要な票を投じるべきだ」とコメントして、苛立ちを隠しませんでした。
トランプ大統領と民主党の主張には隔たりがあり、政府機関の閉鎖が終わり正常化する見通しは立っていません。
12月24日、WTI原油価格は1バレル=42.36ドルとなり、2017年6月下旬以来、約1年半ぶりの安値を付けました。
原油安がさらに進むようであれば、投資家の多くは「世界の株式市場からオイルマネーが流出する」と身構えることになります。
現状のまま、米中関係がこじれ、日本で消費税を引き上げるのであれば、2018年10月時点で、「アベノミクス相場は幕を閉じた」と考えても差し支えありません。
今後の株式市場は「冬の時代」に突入し、空売りやインバース系をメインに売買を行う方が望ましいでしょう。あるいは、「空売り上手」になるためにデモ画面や現金を伴わないバーチャル・トレードで鍛錬を積むのも良いでしょう。
暴落相場の中でも人工知能銘柄のALBERTとチェンジは年初から2倍~10倍に
とはいえ、激動の2018年を振り返る・2万円で踏みとどまった株式市場と為替市場における動向(1)でお伝えしたように、将来有望なAI銘柄である、ALBERT(年初から約10倍)とチェンジ(年初から約2倍)は地合い全体の悪化に関係なく、上昇トレンドを形成しています。
個別銘柄の選別は限りなく難しいですが、非常に強い材料株・好業績株は必ず一年間の中で出てきます。
ずっと戦い続けるのではなく、ヒット&アウェイの戦法を取りながら、そうした千載一遇のチャンスが巡ってきた時だけ勝負をする、中長期投資を念頭に考えるという姿勢が好ましいです。
自動売買ツールや優秀なミラートレードを選択できるFX売買も一つの手段
また、株式一辺倒だった人は、これを機会にFXに参入するのも一つの方法だと考えています。
リスク分散の範囲を株式だけでなく、評価の高いFX会社にも広げておきましょう。
トレイダーズ証券「みんなのシストレ」やインヴァスト証券「シストレ24」は自動売買ツールが充実しています。
もちろん、自分で売買を行う場合はしっかりと勉強して、デモ画面やバーチャル・トレードで慣れ親しむことから始めてください。
2018年は、台風・地震・豪雨・身近な人の不運など本当に波乱ばかりの年でした。
2019年は、良い年になりますように心から祈っております。
「自分独りだけが幸せになれる」というのではなく、「一人でも多くの人が幸せになる」ことを切望しています。
寒い中、ここまで読み進めてくださって本当にありがとうございました!
今後ともよろしくお願い申し上げます。