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スルガ銀行で不正融資が横行した原因と、同行が直面する最大級の試練

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金融庁は10月5日、シェアハウス融資で不正があった地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)に対し、6カ月間の一部業務停止命令と業務改善命令を出しました。業務停止期間は10月12日から2019年4月12日になります。

加えて、金融庁は、11月末までの業務改善計画提出を求めています。

融資での不正は年明けに発覚し、金融庁は4月から立ち入り検査を実施しました。

スルガ銀行の融資残高3.2兆円の中に、リスクの低い「住宅ローン」とは別のリスクの高い「不動産投資」があります。

その中でも、不動産投資の額は融資残高の3分の2(1兆9027億円)にあたり、不良債権化していく懸念も残っています。

スルガ銀行に対する金融庁の指摘

金融庁の指摘として、次のようなもの内容が指摘されました。

  1. シェアハウスなどの投資用不動産融資では、不動産業者が物件の賃料や入居率を改ざん。かさ上げされた物件価格をもとに多額の融資が行われた。行員も改ざんを促したり自ら行ったりした。
  2. 融資審査部は資金使途や保有資産の確認を営業現場に任せきりにした。シェアハウス向け融資は99%が承認され、審査が形骸化していた。資料改ざんを行員が黙認したり関与したりしたのは1千件超にのぼる。
  3. 不動産融資と同時にカードローン契約などを強いる「抱き合わせ」も横行し、法令違反のケースは534件。
  4. 創業家が関係するファミリー企業への不適切な融資を指摘。融資の一部は別のファミリー企業に流れて回収不能。銀行がファミリー企業に寄付して返済に充てたケースもあり、経営陣の一部で決めていた。こうした融資は488億円に上り、そのうち創業家の個人には69億円が融資されていた。有国新社長は、今後全額を回収するとしている。
  5. 暴力団関係者の預金口座を開設したり、ローン額が拡大したりした例も多数あったと指摘した。一連の問題融資に関する金融庁への報告が、実態と異なっていたことも判明。

金融庁は、「創業家支配のもとで、現場では厳しい業績プレッシャーやノルマで行員を圧迫し、不正行為を蔓延(まんえん)させる企業文化が醸成された」と判断しています。

会社員が年収に対して20倍の融資を受けたが、大きな負債だけが残る

賃料収入に期待してオーナーになった約1000人の会社員らは、億単位の借金を抱えて途方にくれています。

その内容は、「シェアハウス投資」ですが、営業の売り文句は、「家賃0円でも儲かる」「身一つで」夢物語、本やCMで融資金額大きい「スルガスキーム」「他行で通らぬ案件も」、という具合です。

今回の案件で被害を受けた40代後半で年収約1000万円の会社員は、シェアハウス2棟を建てる契約を結び、2億円もの借金を抱えました。

なぜなら、不動産業者スマートデイズが、賃料で年8%の高利回りを約束したからです。ところが、賃料が払われなくなることが着工前に判明し、、更地と30年続く毎月100万円の借金返済だけが残りました。

転売しても千万円単位の赤字になりかねず、ローンを組む銀行に窮状を訴えると「借金返済のために、また別のローンを紹介しますよ」と突き放された、という酷い有様です。

悪質な不動産業者の横暴な手口

スルガ銀行の問題が明らかになってからも、他の金融機関の不動産投資向け融資で、不動産業者が資料を改ざんして多額の資金を引き出す不正が続いていたようです。

内部文書や従業員の証言によると、不動産業者が顧客のネットバンキングの預金残高を水増しする不正を繰り返していました。今年4月から夏にかけ、三井住友銀行やりそな銀行、西武信用金庫に不正な融資資料が提出され、一部で融資が実行されています。

チェックが甘い金融機関には残高を水増ししたコピーを提出して、場合によっては、偽造したホームページにログインし、水増しした残高を見せています。

顧客も多額の預金があるように銀行に説明する「口裏合わせ」を行っていた模様です。

不動産業者には、改ざんに不自然な点がないかをチェックする仕組みまであり、不正が発覚しないよう徹底していました。

スルガ銀行で不正融資の連鎖が止まらなかった内部体質

今回の問題で取り上げたいのは、以下のスルガ銀行の対応です。

  • シェアハウス融資は99%が承認され、審査が形骸化
  • 創業家が経営を支配する中、営業現場で創業家の後ろ盾を得た特定の執行役員がノルマで職員を圧迫し、不正が蔓延

シェアハウス投資の流れ

  1. 不動産業者が高額の家賃収入を約束して主に会社員をオーナーに勧誘。
  2. スルガ銀行は1棟あたり億単位の購入資金を融資。
  3. ずさんな投資計画で、不動産業者は昨年から今年初めにかけて業務を停止したり破綻。
  4. 会社員オーナーは多額の借金を抱える事態となる。

融資の過程の最大の問題

  1. 銀行融資の審査に通りやすくするために、融資書類を改ざんしてオーナーの年収や預金残高を水増し(不正が横行し、会社員オーナーが知らない間に改ざんされた場合も)
  2. 不動産業者だけでなくスルガ銀行員も不正に関与した疑い

外部の弁護士らで作る第三者委員会が調査報告書では、多数のスルガ銀行員に加えて支店長ら幹部や執行役員も、融資実績を上げるために不正に関与したと認定しています(9月7日)。

経営陣の責任も厳しく指摘し、創業家出身の岡野光喜会長兼CEO(最高経営責任者)、米山明広社長らが引責辞任しました。

スルガ銀行内で不正融資が横行した最大の原因

  1. 組織内にはパワハラが蔓延しており、上司の脅迫や暴力行為に追いつめられた行員の実態が浮き彫りになる
  2. 営業部門では、現場責任者を務める管理職が行員に対して、会議や電話で日常的に暴言を繰り返し、行員からは「どう喝してもよいという文化があった。

【具体例】

  • 業績の伸び悩んでいたある行員は、「数字ができないなら、ビルから飛び降りろ」との上司から叱責を受けていた。
  • 数値目標を達成できなかった行員が「死んでも頑張ります」と述べると、上司が「それなら死んでみろ」と迫ったこともあった。
  • 「非公式な異動、会議の場での侮辱、休日出勤の強要など枚挙にいとまがなかった」と、社内制度を無視した横暴が繰り返されていた。
  • 時には暴力行為も黙認され、「首をつかまれて壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」と証言した行員もいる。
  • 2~3時間に渡って怒鳴られ、「天然パーマを怒られる、1か月間無視され続ける」などの中傷に近い被害を受けた行員もいた。

こうした内容を、調査を担当した弁護士に告白しています。

今後、スルガ銀行はどうなっていくのか?

今回の深刻なスルガ銀行の不祥事を受けて、倒産をする危険性も少なからずあります。

ただし、 2007年に、福岡銀行と熊本ファミリー銀行が株式移転により経営統合したふくおかフィナンシャルグループ(九州親和ホールディングスとも経営統合し、2020年には十八銀行と経営統合予定)のように、他の銀行に吸収合併されることも考えられます。

経営陣が入れ替わったことで、本気で改革を実行し、立ち直って見事に再生するという可能性も残されています。

スルガ銀行の不祥事が起こった要因の一つとして、日銀の5年に及ぶ異次元の金融緩和、すなわち超低金利政策が確実に影響を及ぼしているのは明らかです。

日銀が金利をある程度つけておけば、それだけで日本の各銀行は国債を購入して稼げるビジネスモデルが以前にはあったのです。

ところが、日銀は日本経済の景気全体を噴かすために、超低金利にしてお金を借りやすく、流れやすい状況を作りました。

このことが、スルガ銀行が転落の道を転げ落ちる遠因となりました。地域経済の潤滑油としての真っ当な融資よりも、リスクもリターンの大きい投資案件に手を出してしまい、スルガ銀行はファンド化してしまったのです。

(出典:ヤフーファイナンス)

この図はスルガ銀行の株価の推移ですが、不正が発覚してからすぐに株価が急落しています。10月9日現在で株価は574円です。

スルガ銀行の経営状態が、今後にどうなっていくのかは、株価の動きにリアルタイムで現われていきます。これからも、定期的にウオッチしていく予定です。

スルガ銀行が11月14日に決算を発表

スルガ銀行 が11月14日15時に決算を発表しました。

2019年3月期第2四半期累計(4~9月)の連結最終損益は985億円の赤字(前年同期は211億円の黒字)に転落し、従来の120億円の黒字予想から大赤字へと転落しました。

決算期 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益 対通期
進捗率
発表日
    16.04-09 70,501 28,000 19,219 83.0 48.1 16/11/09
    17.04-09 75,775 31,162 21,168 91.4 296.1 17/11/09
    18.04-09 75,027 -83,418 -98,595 -425.6 18/11/14
前年同期比 -1.0 赤転 赤転 赤転 (%)
※単位:売上高、営業益、経常益、最終益…「百万円」。1株益、1株配は「円」。率は「%」

また、2019年通期の連結最終損益を従来予想の250億円の黒字から、975億円の赤字(前期は69.8億円の黒字)に下方修正し、一転して赤字見通しとなりました。

決算期 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益 1株配 発表日
  旧  2019.03 36,500 25,000 107.92 21 18/05/15
  新  2019.03 -75,500 -97,500 -422.72 18/11/14
修正率 赤転 赤転 赤転 (%

(出典:株探)

中間決算での赤字はITバブル崩壊の2001年9月期以来、17年振りのことです。

審査書類の改ざんによる不正が横行していた、シェアハウス向け融資で、貸し倒れに備えた引当金を大幅に積み増したため、損失が膨らむ結果となりました。

こうした業績は、スルガ銀行の純資産を28.5%毀損する赤字額の規模となり、今期の年間配当を21円から未定に変更しました。

ただし、財務の健全性を示す自己資本比率は9月末時点で8.74%と高く、国内銀行に求められる水準の2倍を確保しています。

スルガ銀行は、2019年前半に臨時株主総会を開いて、経営陣を見直すことを発表しました。

有国三知男社長は、他行との資本業務提携について「企業価値向上につながるのであれば、検討する」と記者会見で語りましたが、引責辞任については「未定」と述べるに留まりました。

9月末の預金残高は3兆4159億円と、3月末から6737億円減少していることに対しては、「10月以降、顧客離れや預金の動向は落ち着いている」と有国三知男社長は強調しました。

「スルガは銀行ではなく消費者金融会社」とある地銀の頭取は酷評しています。その理由として「スルガ銀行が抜け駆けして、ゆうちょ銀行と住宅ローンで提携した恨みつらみが根底に横たわっている」というアナリストの指摘があります。

ゆうちょ銀行は2008年5月に、スルガ銀行と提携して住宅ローンの仲介を始めています。

派遣社員や中途採用の社員など、融資の審査が降りにくい顧客に対しての住宅ローンで、両行は提携し、年間の金利を6~7%と高い水準に設定しました。

このように、スルガ銀行が、個人向けローンに特化することで、高収益を上げる経営方針に舵を取ったのは、ゆうちょ銀行との住宅ローンの提携がきっかけです。

そこには、ゆうちょ銀行の強力な販売力をバックに、スルガ銀行が業務拡大を図る狙いがありました。

その一方で、ゆうちょ銀行は2012年9月、「住宅ローンなど個人向け融資」「住宅ローンに伴う火災保険など損害保険の募集」「法人向け融資」について、金融庁に認可を申請しました。

ところが、他の地方銀行への「民業圧迫」になることを懸念して、金融庁は認可しませんでした。

住宅ローンを自前で販売することが不可能なゆうちょ銀行は、スルガ銀行の金融商品の委託販売を行うことで、融資業務による収益を生み出そうとしていたのです。

住宅ローンを自前で販売できないゆうちょ銀行が、不正が横行していたスルガ銀行と、今後も手を組んで事業を継続していくかどうか注目されます。

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