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健全なイメージの「スルガ銀行」を襲った不正融資と業務停止命令の悪夢

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スルガ銀行は、東証1部(銘柄コード8358)に1963年6月上場したと企業で、長らくの間、堅実な優等生の企業と高い評価を受けていた地方銀行です。

スルガ銀行 本社所在地 静岡県沼津市通横町23番地 設立 1895年10月19日

業種 銀行業 法人番号 9080101000957 金融機関コード 0150

SWIFTコード SRFXJPJT

事業内容 預金業務、貸出業務、有価証券売買業務・投資業務、為替業務など

資本金 300億4,300万円 発行済株式総数 2億5,813万9千株

従業員数 単体:1,577人 連結 1,831人

社長 有国三知男氏

決算期 3月31日 店舗数 130店

貸出金残高 3兆113億10百万円 預金残高 3兆9,591億97百万円

静岡県は本店並びに県庁内を含めて66店、神奈川県は県庁内を含めて36店あります。本店所在県ではない神奈川県の営業基盤は、第二次世界大戦前からのもので、進出都道府県数は12です。

一方愛知県は名古屋市の1店のみ有し、静岡県と隣接する豊橋市からは撤退しました。地盤の静岡県、神奈川県以外の店舗は法人営業中心でしたが、ネット支店を展開し始めた2000年より個人用住宅ローン(主に不動産販売会社と提携したもの)の相談・手続窓口「ドリームプラザ」を併設するようになりました。その後、さいたま市大宮区に東京支店大宮出張所を新設する形で関東地方北部へ進出していきます。

その後、2008年5月に北海道札幌市、同年8月に福岡県福岡市、同年10月1日に宮城県仙台市、2009年4月21日に京都府京都市、2012年5月22日には広島県広島市に出店しました。地方銀行ながらメガバンクのように日本五大都市圏全てに進出し、北海道から九州まで四国を除く日本の全ての地方に店舗を構えました。ドリームプラザ併設店舗は、「住宅ローン業務」を中心としたもので、その多くが空中店舗居(ビルやオフィスビルの2階以上に出店すること)ですが併設の支店、出張所では通常の銀行業務を扱い、ATMも設置しています。

特にインターネットバンキングに力を入れており、多くの企業と提携してネット支店を開設しています。コンビニATMや郵貯ATMでも自由に引き出せます。

スルガ銀行は、従来、堅実で素晴らしいビジネスモデルを創出する銀行として高く評価されていました。

「スルガ銀行のように戦略を工夫することで連続最高益を計上する地銀も出てきている(2017年5月21日付日経新聞社説)」

「スルガ銀行は非正規社員やひとり親世代の住宅ローンなどに照準を絞って顧客層を広げている(2016年9月28日付日経新聞朝刊)」

といった報道で日経新聞が何度も持ち上げています。

シェアハウス融資など不動産投資向けで不正融資 創業家への不透明な融資 暴力団関係者への融資も判明

ところが、2018年になって様々な不祥事や深刻な問題が発覚してきました。今出ている情報は氷山の一角でさらに根深い不祥事を抱えている可能性が高い、という憶測も飛び交っています。

その内情は、銀行業務の伝統的なビジネスである法人への融資ではなく個人向けのローンによって利ざやを稼ごうとする融資に力を入れて稼ぐ方法を積極的に推進していたことに起因しています。

(出典:株探)

不正融資に手を染めたスルガ銀行に対する世間の目は、非常に厳しく、業績のさらなる下振れが懸念されています。

その背景として、組織ぐるみの不正融資や営業ノルマによるプレッシャー、さらには法的責任などが挙げられます。

2017年3月期決算における経常利益・純利益は、地方銀行64行中、横浜、千葉、福岡に次いで4番目に大きい金額でした。

不正融資の貸倒引当金で業績が大きく落ち込むスルガ銀行

ところが、2018年3月期決算での経常利益・純利益は大きく落ち込みます。

地方銀行の中での順位も42位まで一気に下落しました。17年3月期では経常利益額が、522億円、純利益が426億円と好調でしたが、18年3月期では経常利益が105億円、純利益が69億円と、経常利益で80%以上、純利益で84%と大きく落ち込みました。

2018年(平成30年)9月7日  不正融資問題を受けて、岡野光喜会長兼CEO、米山明広社長ら役員5名が引責辞任し、有国三知男取締役が社長に昇格する人事を発表しました。

2018年10月5日   金融庁は不動産投資向けの新規融資を6カ月間禁じる一部業務停止命令を出しましたた。資料改竄などの不正融資以外にも反社会的勢力への融資といった問題があることを理由にあげています。

経常利益と純利益が減少した主な原因は、貸倒引当金です。これは、貸付金が回収不能になる可能性を考慮して計上するものです。つまり、貸倒引当金は、売掛金や貸付金など、債権回収が不能になった場合に備え、各期の利益から債権の額に応じて積み立てておく金額のことです。

債権のリスクに応じて適度な比率で引当金を十分に積んでおけば、回収不能となった場合、大きな損失を被るリスクを回避できます。

不動産バブル崩壊後、金融機関の融資先資金の回収ができない、いわゆる不良債権問題が表面化しました。銀行は、融資先企業の返済能力を独自に判断し、回収できない可能性に備えて貸倒引当金を大幅に積み増すようになりました。

スルガ銀行が貸倒引当金を18年3月期で一気に計上したのは、高いリスクと高いリターンを求めてファンドのような不正融資を行ってきたからです。

その時点で、シェアハウス融資にからむスルガ銀の不適切融資が1兆円規模に上ることが分かりました。融資総額3兆円強の3分の1に相当する金額です。

以下がそのデータになります。

シェアハウスの個人向けローンなど(主に不動産投資案件)の残高が
2011年3月  +41億
2012年3月  +523憶
2013年3月  +882億
2014年3月  +1105億
と、たった3年で26倍以上に増加しています。

その一方で、住宅ローンの融資残高については、
2011年 +705億
2012年 +868億
2013年 +686億
2014年 +328億
2015年 -2億
2016年 +370億
2017年 +474億
と、停滞していることが読み取れます。

融資残高の大部分で不正が疑われる異常事態 再建への道のりは厳しい

金融庁の指摘として、次のようなもの内容が指摘されました。

  1. シェアハウスなどの投資用不動産融資では、不動産業者が物件の賃料や入居率を改ざん。かさ上げされた物件価格をもとに多額の融資が行われた。行員も改ざんを促したり自ら行ったりした。
  2. 融資審査部は資金使途や保有資産の確認を営業現場に任せきりにした。シェアハウス向け融資は99%が承認され、審査が形骸化していた。資料改ざんを行員が黙認したり関与したりしたのは1千件超にのぼる。
  3. 不動産融資と同時にカードローン契約などを強いる「抱き合わせ」も横行し、法令違反のケースは534件。
  4. 創業家が関係するファミリー企業への不適切な融資を指摘。融資の一部は別のファミリー企業に流れて回収不能。銀行がファミリー企業に寄付して返済に充てたケースもあり、経営陣の一部で決めていた。こうした融資は488億円に上り、そのうち創業家の個人には69億円が融資されていた。有国新社長は、今後全額を回収するとしている。
  5. 暴力団関係者の預金口座を開設したり、ローン額が拡大したりした例も多数あったと指摘した。一連の問題融資に関する金融庁への報告が、実態と異なっていたことも判明。

金融庁は、「創業家支配のもとで、現場では厳しい業績プレッシャーやノルマで行員を圧迫し不正行為を蔓延(まんえん)させる企業文化が醸成された」と判断しています。

一方で、スルガ銀行の取締役会も「貸し出しなどの内容を把握せず、監督機能を果たさないなど経営管理に問題があった」と認定しました、

財務体質はあくまで健全 スルガ銀行が信頼を取り戻せるかが今後の命運を左右する

第三者委員会の報告書では、融資審査がずさんであることが糾弾されています。

ブランド価値が著しく減少し、顧客離れが起きる恐れも高まっています。

しかし赤字にはなっていませんし、貸倒引当金の計上は一段落して落ち着くという楽観的な見方もあります。

一応は、今後、経常利益や純利益が回復していく可能性が残されています。

というのも、スルガ銀行の自己資本比率(2018年3月期)は地銀の中でも高く、自己資本比率の国内基準を採用する銀行で4位となっています。自己資本率は8.1%と高く利益剰余金は2935億円に上ります。しかも、有利子負債がありません。

業績通期で赤字決算を出していない以上、上場の継続疑義はつかないですし、数字だけを見ると、2~3年で元の状態に戻りそうな財務体質であるようにさえ思えます。

あくまで、数字だけを見ると、容易に潰れる、ということは考えにくいのです。

スルガ銀行は、マイナス金利や法人貸出先が減少する中で、個人融資営業に重点を置いてきました。

他の地方銀行と横並びの意識でビジネスを行っていてはは行き詰まると考え、新しいビジネスモデルを構築することを優先していたのです。

ところが、法令遵守(コンプライアンス)企業統治(コーボレートガバナンス)情報開示(ディスクロージャー)という企業が本来優先すべき社会的責任を果たせなかった、という弱点が露になっています。

多くの顧客が損失を抱え、多大な迷惑をかけたことを、スルガ銀行は重く受け止めるべきです。

今後は、不正の徹底解明と、組織体制の見直しが求められます。

内部事情に曖昧な点や不透明な部分が残っていれば、一般社会からの信頼性は到底得られないでしょう。

それが、業務の改善につながらなければ、預金が流出し、業務ができなくなり、他の銀行との統合も選択肢の一つとして考えざるを得なくなります。

スルガ銀行には、新しく生まれ変わった健全な銀行として再出発を果たす強い覚悟が求められています。

スルガ銀行の18年4~9月期と19年3月期(通期決算)が発表される

2018年4~9月期の連結最終損益は985億円の赤字(前年同期は211億円の黒字)になったと発表し、2019年3月期の連結最終損益も975億円の赤字(前期は69億円の黒字)になる見通しです。

不正が横行したシェアハウス関連の融資で、抜本的な不良債権処理に踏み切り、巨額の貸倒引当金を積んだことが原因です。

しかし、スルガ銀行は9月末時点で手元資金が5000億円以上あることを強調しており、資金繰りに万全を期すために「日銀と緊密に連携しながら、住宅ローン債権などを預けて資金調達できる準備はしている」という見解を示しました。

しかし、主要な収益源の投資用不動産向け融資は、金融庁に業務停止命令(6カ月間)を受けており、再開の見通しは立っていません。

結局のところ、経営再建に向けた支援先を外部に探し、顧客からの信用を取り戻すことが先決の課題となっています。

ゆうちょ銀行と提携した住宅ローン向け融資について、他の地方銀行から「抜け駆け、裏切り」だと大きな非難を浴びていたため、地銀からの印象は悪く、手を差し伸べてくれるかどうか分かりません。

それでも、潜在的に関心を持つ企業は多いという情報も飛び交っています。

本業の儲けである純利益は前年同期比9%減の301億円と安定しており、不動産融資に関連する不正や焦げ付き以外は、健全経営を維持していることが改めて確認されました。

今後も、スルガ銀行の動向に注目が集まることになりそうです。

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