コラム

アメリカのトランプ大統領による貿易戦争が激化!!

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ある国の輸入額が輸出額より多い状態のことを「貿易赤字」と定義します。貿易赤字は「借金」ではないので、返済の必要がありません。

輸入額が輸出額よりも大きいのは、その国の通貨が強く、消費者の購買意欲が旺盛で、豊かで繁栄していることを意味する、という見解もあります。

とはいえ、こうした赤字赤字がどう影響するかは、各国が置かれている経済状況や財政状況によって変わってきます。

どういう事情で赤字になっているのかによって「全く問題のない赤字」と「極めて問題がある赤字」に分かれるのです。

他国に負債があるかどうか、自国通貨が貿易決済手段として使われているか、GDPの大きさや生産性の高さ、モノやサービスの品質のレベルや供給能力などを総合的に捉えなければ、一律に判断することは困難です。

アメリカの場合、対外債務が886兆円と世界一の規模で非常に大きいです。

しかし、自国通貨建てのドルは国際的な決済手段として用いられ、新たな付加価値を創出する能力の最も高い国だと位置づけることが出来ます。

そういう意味では、早急に貿易赤字そのものを解消させる必要があるかどうかは疑わしいと言えます。

アメリカの対外債務は、実際には海外からの多くの投資マネーが流入していることが原因です。ニューヨークダウ平均を始めとするアメリカの株価は過去最高の水準にあります。

ニューヨークダウ平均(出典:ヤフーファイナンス)

これは、アメリカ国民が投資しているだけに限らず、それだけ海外から多くの資本が流入しているということを表しています。それが対外債務につながっているのです。もし、アメリカから海外資金の引き上げが起こったら、株価が大暴落する可能性も高くなります。

個人的には、他国と喧嘩せずに「事なきを得る」ような政策を実行するのが、経済的には好ましい方法だと考えています。

アメリカは、地域によって衰退が顕著なところも多く、そうした場所を活性化できるのであれば、貿易赤字の解消にこだわることは、堅調な世界経済を混乱させるだけに終わる危険性を孕んでいます。

中国に容赦ない貿易戦争を仕掛けるトランプ大統領

トランプ米政権が仕掛けている中国・欧州への「貿易戦争」に対して、アメリカ政府の関係者は大きな危惧を抱いています。

その理由は、1929年に起こったウォール街の株価大暴落の後、1930年代に保護主義の風潮が高まり、世界中が大不況に苦しめられた過ちを繰り返してはならない、という過去の悲惨な歴史に基づいています。

当時の貿易戦争は大不況だけに留まらず、各国の関係悪化をもたらしました。

「欧米の列強と日本」はそれぞれが持つ植民地を「関税同盟と貿易協定」で囲い込んでブロック化し、高率の関税障壁を張り巡らせたり、通商条約の破棄を行うことで、他のブロックに需要が漏れ出さないようにしました。これをブロック経済を呼びます。

自らが属するブロック以外の分断は強まり、次第に自分のブロックから他のブロックに武力で進出していきました。その結果が、第二次世界大戦への引き金を引くことになったのです。

保護主義と攻撃的な政策の応酬は、1930年代に激化した貿易戦争を彷彿とさせる場面も多く、インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相は「このままエスカレートすれば破滅的な大恐慌を目の当たりにする」という懸念を表明しています。

1930年、アメリカのフーバー大統領はスムートホーリー法という関税法を成立させました。国内産業保護のために、農作物など2万品目の輸入関税を平均50%も引き上げたのです。

その輸入関税への報復措置として、多くの先進国がアメリカの商品に高い関税をかけたことで、世界中の貿易が停滞し。景気の悪化を深刻化させることになりました。

2018年に入ってから、自らの政治公約を守り、中間選挙で勝利を手にするため、アメリカの貿易赤字解消と、雇用の国内回帰を掲げていたトランプ大統領は、着実にアメリカ・ファースト(国内優先主義)の経済政策を実行に移しています。

まずは鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を3月に発動し、欧州連合(EU)にも6月に適用しました。

また、中国の知的財産侵害を理由とした巨額の制裁関税を7月上旬に実施しました。

アメリカが仕掛けた貿易摩擦について、最初の頃はトランプ大統領の支持率を上げるための「見せかけに過ぎない」という見方も多くありました。昨年にアメリカが輸入した額の4%程(約920億ドル)と、小規模に対中制裁として関税が適応されたからです。

1930年代のスムートホーリー法では、当時のアメリカが輸入した額の約33%に当たる大きな規模の商品が関税の対象となりました。

1980年代のレーガン政権において、保護主義的な貿易制限が行われた時も、約21%と高い水準にありました。

それらに比べると、トランプ政権が初動で行った貿易制限は少なく見せかけに思えます。

ところが、中国に対しての貿易制裁を次々と拡大していきます。すると、アメリカが中国から輸入する約25%に追加関税を課し、対象額を25~28兆円の規模に広げていったのです。

もしも、トランプ大統領が貿易制限を全て実行に移せば、輸入額に対する対象品の規模の点で、1930年代の保護主義政策と匹敵することになります。

この対抗処置として、中国政府は、米国が関税拡大の政策を実行した場合、6兆7000億円相当のアメリカ製品を対象として、追加関税を課す予定です。

米中貿易戦争は、台湾問題や北朝鮮核問題、南シナ海問題、イラン原油禁輸問題に大きな影響を及ぼす可能性があります。米中の覇権争いが、現実レベルでの安全保障問題として浮き彫りになってきたのです。

そのことを象徴するかのように、中国の一体一路構想(中国が主導して形成する経済、外交圏)に対抗する形で、アメリカは東南アジア向け投資ファンドを立ち上げました。

アメリカが中国に対して強行姿勢をとっているのは、外交レベルだけでなく、アメリカ政府内の親中派の排除としても現われています。そこで、アメリカに人脈を持つ中国の王岐山副主席が先頭に立って米中貿易協議を行おうとしています。

米中共に、相手国に対して強硬派の立場にあるため、より強い態度を取り、厳しい処置を行う危険性が高まっているのが現状です。

戦う修道士との異名を持つマティス国防長官のような冷静な対応をする意見が、アメリカ国内では少数派となっており、両国の交渉が上手く行かないと、「制裁に次ぐ制裁」という悪循環になりそうな雰囲気が出てきています。

グローバル主義から国内回帰主義を目指すトランプ大統領

トランプ大統領が国内優先主義に走ったのは、実体経済の観点では次のような要因が挙げられます。

世界経済のグローバル化によって、製造業はコスト削減のために人件費の安い中国などの途上国に移ります。そこで作られた安くて品質が高い製品がアメリカに輸入されることで、貿易赤字が大きく積み上がってしまったのです。

特にこのようなグローバル主義の打撃を受け続け、衰退していったのは、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業を担っていた「ラストベルト」と呼ばれる工業地帯です。

「ラストベルト」とは、アメリカの中西部から北東部に位置し、五大湖近くのミシガン州・オハイオ州・ウィスコンシン州・ペンシルベニア州などが含まれます。現在は、水素燃料電池の開発、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術といった新生技術によって回復しつつあります。この地域はエンジニアリング(科学技術を使って物品を生産)に関する仕事の重要な供給源です。

2016年の大統領選でトランプ氏は「アメリカに工場を取り戻す」と約束しました。

つまり、中国など人件費の安い国に仕事を奪われたラストベルトの白人有権者の支持層によって当選したのです。2018年は11月に行われる中間選挙に向けて彼らに強くアピールするために強硬路線を取っていると考えられます。

トランプ大統領の思惑通り、もしも製造業がアメリカに戻るのであれば、アメリカの労働者は仕事や雇用が増えることでしょう。

高い関税によって競争相手の中国製品が売れなくなることで、アメリカ本土を拠点とする企業は短期的には歓喜の声を上げるかもしれません。

その代わり、関税が上がることで物価も上昇し、消費活動全体が減退するという不安が生じてきます。

報復措置の応酬という高い関税の仕掛け合いでは、世界全体の貿易量が減ることになるのです。

その結果、アメリカの製品自体が輸出してもあまり売れなくなり、経済成長は鈍化するはずです。

最終的には、アメリカの企業も労働者も損をして敗北者となるのです。これが過去の歴史における貿易戦争の教訓です。誰も勝てないゲームに、トランプ大統領は挑んでいるのです。

もしも、貿易戦争がエスカレートして景気が悪化すれば、確実に株価は下がることになります。

2018年8月時点では、日米の株価は上昇もしくは安定していますが、中国の株価は先行きの不透明感から大きな下落基調が続いています。

為替も、アメリカの景気減速が明確になれば、ドル&株安となり、政策変更で貿易戦争が緩和すればドル&株高に向かうことでしょう。

トランプが中国を相手に貿易戦争に踏み切った理由として、WTO(世界貿易機関)による知的財産権の保護が不十分という不満があります。

確かに、中国が2001年にWTOに加盟した後、中国企業は、アメリカ企業の技術を模倣したり、盗作することで成長してきたことは否めません。

とはいっても、WTOに加盟する国の主権に対して、取り締まろうとするのは限界があります。

何故なら、WTO加盟国には 不平等な扱いをしない「最恵国待遇の権利」が与えられているからです。

具合的には、

  1. WTO加盟国は2国間の通商関係において、関税・貿易などの面で一番良い貿易待遇を約束する。
  2. 締結時点において他国よりも不利にならない貿易待遇が与えられる。
  3. 将来、締結国が第三国に有利な貿易待遇を与えても、第三国よりも不利な扱いをしない

という制度が備わっているのです。

まとめますと、WTOに加盟している国家は、お互いに最恵国待遇を与え合うことになっており、どの国も不利になるような条件を突きつけられた状態に甘んじる必要はない、ということです。

それと同時に、各国が自国産業を守るため緊急に輸入制限できる「セーフガード」もWTOは認めています。

WTOは、国家間の貿易紛争を調停できる唯一の機関ですが、保護主義を抑え切れず、信頼性が揺らいでいるのが今の状況です。

世界中に自由貿易が普及すると、やがて弱肉強食がはっきりと目立つようになります。

すると、どうしても、弱い立場の農家や生産性の低い労働者が淘汰されてしまいます。

2016年のイギリスのEU離脱と同じく、保護主義を前面に打ち出すトランプ大統領の大胆な行動は、行き過ぎたグローバル化に対する反動でもあります。

激しい貿易戦争の行く末には、勝利者が存在せず、敗北者だけが残ります。

こうした保護主義(=貿易戦争、自国優先主義)を防ぐためには、行き過ぎたグローバル化を改善していくことが必須事項だと言えます。

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