アメリカ・中国

アメリカ中間選挙を前に世界同時株安でトランプ政権に暗雲!?




10月11日、日経平均株価指数は前日比-915.18と大暴落し、終値は22,590.86円となりました。中国を中心に、世界同時株安連鎖が起こっています。

7年5カ月ぶりにアメリカ長期金利が3%を超える

その背景として、前日に米長期金利が一時は3.26%と7年5カ月ぶりの高水準を付けたことが大きいです。

この金利高を嫌気してニューヨーク・ダウ平均は急落し、831ドルル以上の下落となりました。恐怖指数VIX22.69と40%も跳ね上がっています。

長期金利高は、将来の景気に対する楽観なので、アメリカ経済が好調であることを示しているのですが、金融市場は、金利の変動幅が激しいことに動揺しています。

パウエルFRB議長は、「中立金利を超えても必要とあれば利上げする用意がある。但し当面は金利水準が中立からは程遠い。」と語りました。市場関係者は、利上げの必要ありという部分を重視している模様です。

(中立金利=景気に対して緩和的でも引き締め的でもない程好い中立的な金利のことをいいます。)

日本10年債利回りは、0.155%に上昇しました。しかし、日銀は国債買い入れを行わず、長期金利上限0.2%容認の姿勢を見せたことは注目に値します。世界中で、国債高の流れが起こっています。つまり国債が売られているのです。

詳しくは、「日本銀行、「長期金利0.2%までの容認」がどんな意味を持つのか!?」 をご覧ください。

引用:もし金利が1%上がると、国債の価格は8%(80兆円)下落し、2%上がると、16%(160兆円)の含み損が生じます。

主に国債を買っているのは、日銀の他、金融機関(銀行、生保)であり、これらが国債の含み損を抱えることになります。

そのため、正常に運営されている国家では、全くトラブル要因とはならない1~2%の金利上昇が、銀行や生保が抱える国債の含み損につながり、それは全て保有資産の価格下落となるのです。

銀行や生保が財務体質を極端に悪化させると、過去の歴史においては、必ず金融危機が起こっています。金融危機とは、金融機関(特に銀行)の不良債権の増加と、保有債券と株の下落から起こる信用収縮です。

ドルの金利急騰が新興国経済に与える影響も心配されており、中国の株安をきっかけに軒並み、台湾やシンガポールなどで株が売られています。ドルは国際決済通貨であり、新興国にとってドル金利の上昇は、資金の調達が困難になると受け止められるのです。

本当に、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度)は中立金利を3%以上に想定しているのでしょうか?

米中間選挙の予測としては、70%くらいが、上院は共和党が勝利し、下院は民主党が勝利するというねじれ議会を予想しています。

また、「ニューヨーク株式市場は、トランプ相場の中で育ってきた」ことを考えると、株式相場が、選挙結果に大きな影響を与える可能性も高まっています。

目先は調整し、株価が下落基調になるのは避けられないでしょう。

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悪口が目立つ割には、トランプ頼みの金融業者が多いという現実

ここ数年で多くのヘッジファンドは、パフォーマンスが悪く、解散したりと、解約したりと良いところがありませんでした。

その意味で、彼らも、共和党のトランプ政権が優勢になることを望んでいます。

トランプ大統領の最大の貢献は、アメリカ景気を押し上げたこと、一般市民の預金率が低く投資比重が非常に高い株式相場を最高値まで持っていったことです。

当然、一般の市民は、心の余裕が出来て、お酒や嗜好品など消費を気軽にしやすくなります。

とはいえ、トランプ大統領の様々な疑惑や過激な発言に嫌悪感を抱いている人が多いのも事実です。

もしも、下院で民主党が勝利すれば、アメリカの金利上昇はひとまず収束する可能性が高いでしょう。トランプ大統領のやりたい放題の政治に釘を指して、景気過熱が和らぐ要因が一つ出来るからです。

とはいえ、ある意味で仕事熱心なトランプ大統領の求心力が落ちて、マーケットが混乱する懸念も考えられます。

トランプ大統領も株価暴落には慌てています。

中央銀行FRBを「クレージー」と連呼し、「私は気に入らない。インフレは抑制されている。利上げは急ぐ必要はない。」と苦言を呈しました。

その一方で、トランプ大統領は、「FRBの政治的独立性は尊重する」と発言したことで金融市場は一応ホッとしています。

株価は、トランプ経済政策の通信簿のようなものと自ら位置付けています。

国債金利上昇と米中貿易摩擦が、アメリカ経済に暗雲をもたらす!?

株価が上昇基調にある時には、自らの功績として自画自賛してきただけに、中間選挙前後に下落基調に転じた状況でどのようなコメントを発信していくのか興味深いです。

やはりFRBに責任転嫁するコメントをするのでしょうか?

アメリカで株価の暴落が日本時間で10月12日午前3時30分、ニューヨーク時間14時44分時点で-557.60(-2.18%)の下落となっています。

これは、明らかに、金利上昇だけでなく、米中貿易摩擦も影響していると考えられます。

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自国優先主義が、他国に迷惑をかけ、最終的に自国を傷つける結果になる危険性も

トランプ大統領が、アメリカのことを最優先にしようとして、中国に厳しい関税制裁をかけたことが、世界経済にダメージを与え、ブーメランのように国内に跳ね返ってきているとしたら、彼にとっては思いもよらないことでしょう。

尚、中国の上海総合指数が2014年来の2,583.46ポイント(前日比-142.38、-5.22%)とあっさり、節目の2600を割り込んでしまったので、下値が見えない状況です。

中国は、部品を他の新興国から供給しているので、新興アジア全般の株式が売られています。

それに加えて、ここに来て、人民元安が目立っていますが、

  1. 対貿易戦争による関税引き上げへの抵抗として人民元安による輸出の利益を確保すること
  2. 中国の国家通貨である人民元に対する不安から国外流出が進んでいるが、中国が保有するアメリカの国債を売って、人民元を買い戻している

という動きが出ている可能性が高いです。

中国は、世界最大のアメリカ国債の買い手です。2017年時点で、1兆1800億ドル(約125兆円)を保有していました。もちろん、アメリカは、海外の自国の負債である国債を買ってもらうことで国内経済が成り立っているという側面があります。第二次世界大戦後、対外的に強い態度を取り続けてきましたが、何と50%のアメリカ国債を海外に買ってもらっているのです。

もしも、中国が貿易戦争による経済損失や資金の国外流出の影響で、アメリカ国債を売って人民元の価値を維持しようとするならば、アメリカ国債の金利上昇のピッチが上がっても何ら不思議ではありません。(ところが、「これ以上金利は上昇しない=誰かが国債を買ってくれる」と考えている楽観的な投資家が数多くいるのです。)

貿易戦争が通貨戦争、新冷戦、実際の戦争へと発展する!?

貿易戦争は、国債の売買を通じて、「為替戦争・通貨戦争」という第二段階のフェーズにまで発展していく可能性もあることを踏まえる必要があります。

長期金利の指標であるアメリカ10年国債の金利上昇は、住宅や自動車の購入ローン、大学生の教育ローンなどに計り知れない大きなダメージを与えます。

前者は民間の金融機関の不良債権となり、後者は国や地方の公的機関の財政悪化につながるからです。これらが複合的に重なって、リーマンショックのような事態になることは、全くあり得ないとは言い切れません。

一律21%への引き下げとい法人税減税で企業業績が好調なアメリカ経済も、中間階級層がまだ恩恵を受けておらず、トランプ大統領は、中間選挙後に約10%の所得税減税を検討していることを発表しました。

これにより、アメリカ財政はさらに悪化しますが、トランプ大統領は経済成長と個人所得の増加によって賄えると考えているようです。

しかし、自国の国債の50%を海外投資家が買っており、その保有率のトップが中国であることを忘れるべきではありません。

対中貿易赤字は、アメリカ国内の旺盛な消費需要と、そのニーズに応えるべく中国から大量の輸入品を購入していることに由来しています。それを米中貿易戦争という形でケリをつけようとすると、当然お互いが傷つけ合うことになります。

それを証明するかのように、建機大手の米キャタピラーが発表した2018年7~9月期決算は、純利益が前年同期比63%増の17億2700万ドルでしたが、通期の利益は従来予想を据え置いています。鉄鋼への追加関税の影響で材料コストが重荷となることが懸念され、10月23日に株価は大幅に下落しました。

11月末に予定されているアルゼンチンのG20首脳会談で、米中貿易交渉が妥結するかどうかで世界の株価の行方が大きく左右されることになります。

もし幸いにも妥結すれば、各国の株価は大きく上がります。

しかし、不運なことに妥結しなければ、2019年も世界の株式市場は乱高下を繰り返し、景気の下押し圧力となって深刻な問題を引き起こすことになります。

米中貿易戦争は、経済面における対立だけでなく、軍事・安全保障における覇権争いも含まれています。

アメリカの方から折れることは決してありませんが、中国としては、貿易や関税に関して、「何をしたら良いのか分からない。アメリカが何を望んでいるのか見えてこない」というのが本音なのです。

本当にアメリカが満足する中国からの回答というのは、一帯一路構想の見直しや、日本領土の尖閣諸島や南沙諸島の人工島から手を引くことです。

その要求を中国が簡単に受け入れることはまず考えられません。

貿易戦争が通貨戦争に波及し、さらに新冷戦となり、時間の経過と共に本当の戦争とならないことを切実に願っております。

【2018年の南沙諸島の動向】

  • 2月アメリカ海軍の原子力空母カール・ヴィンソンを中心とする空母打撃群がフィリピンのマニラとベトナムのダナンに寄港。1975年のベトナム戦争終結後、初めてのことで中国を牽制する狙いがあると見られる。
  • 4月~5月、中国はファイアリー・クロス礁、ミスチーフ礁、スビ礁に電波妨害装置・対艦巡航ミサイル・地対空ミサイルを配備。

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