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コラム

米中貿易摩擦の影響を懸念した日銀のETFによる株価買い支えの増額

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日本銀行は2018年10月31日、金融政策決定会合において、2%の物価上昇目標の実現に向けて、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に抑える現行の大規模金融緩和の枠組みを続ける方針を表明しました。

景気回復、デフレ脱却の指標である物価上昇率は、思うように伸びない状況が続く

直近9月の消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)は、前年同月比1.0%上昇とプラス幅が拡大しましたが、サウジ情勢の不安定による原油高が影響しており、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは前年同月比0.4%上昇と低い水準にあります。

(CPIとは、消費者物価の変化を表わす指数を意味します。国民の現実的な生活水準を示す指標の一つとして広く利用されています。数値の上下傾向が、景気判断の目安となる重要な経済指標です。)

こうしたことからインフレ目標である2%には程遠く、その達成には難しいデフレ状況が続いています。

経済・物価情勢の展望リポートでは、「経済は緩やかな拡大を続けると見られる」といった今後の動向への見通しを基本的に維持しましたが、海外経済の不確実性の高まりを理由に「経済・物価ともに下振れリスクが大きい」とも明記しました。

その原因として

  1. 米中貿易戦争の激化
  2. 米利上げを背景とした新興国の通貨・株式市場の不安定な動き
  3. 欧州連合(EU)と反りが合わないイタリアの財政問題
  4. イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐる混乱
  5. 原油価格を左右する中東情勢(特にサウジアラビア)の不透明感

などを列挙しています。

米中貿易戦争の火種は、世界経済全体へと波及するリスク

最も日銀が神経質になっている悪材料は、言うまでもなく米中貿易戦争に端を発する世界経済全体への影響です。

日銀幹部は、「短期と中長期の2段構えで見ていく必要がある」と考えており、貿易戦争によって金融市場と実体経済の冷え込みが早い段階で表れてくる可能性がある、と言及しています。

その一方で、米国は大型減税の影響でかなり好景気に沸いており、目先の段階では大きな危険性が抑えられる展開も予想されます。

とはいえ、今後ずっと楽観視ができる状態ではなく、保護主義が拡大する負の衝撃は中長期的にジワジワと効いてくることを警戒しています。

アメリカの大型減税の効果は、やがて薄まるのに対し、米中貿易戦争は覇権争い、新冷戦時代突入へと発展し、両国の対立は長期戦になると予想されています。

日経平均と株価の安定に配慮する日本銀行のEFT(上場投資信託)購入額は過去最大

こうした先行きの不透明感が、10月初旬から株式市場にネガティブな印象を与え始めており、日銀は株価の安定に懸命に努めています。

確かにアメリカのニューヨークダウが大幅下落しても、日経平均は2万1000円台で何とか踏みとどまっています。その背景には、日銀のETF購入による株価下支えが大きく寄与しているという事実があります。

10月における日銀のETF購入は、12回と全営業日の50%超に達しており、2日に1回という異例の頻度になりました。

月間のETF購入額は約8700億円と過去最高に膨らんでおり、今ここで株価の買い支えをしないと、「売りが売りを呼ぶ」展開が加速し、株価大暴落の危険性があるため、ETF購入の基準を緩めた模様です。

(出典:朝日新聞・日本経済新聞)

日銀は、先行きの不透明感によって、金融市場の不安感が増大した結果、実体経済にも負の作用が及ぶことのないよう最善の防止策を取っていく方針です。

日銀は7月時点で、ETF購入額による株価の買い支えは「年約6兆円」を維持しつつも、「市場の状況に応じて、上下に変動しうる」という新しい方針を示しました。

10月31日の金融政策決定会合においてもこの方針を維持し、今後も柔軟に買い入れを実施していく構えです。

とは言え、日銀によるETF買いについて、「株式市場を歪めている」との批判も根強くあります。

また、国債の買い入れを用いた追加の金融緩和策を打ち出すのも難しくなっています。

米中貿易戦争と消費税引き上げの影響で、経済成長率と物価上昇率の見通しも足踏み状態 参議院選挙では波乱が待ち受けている?

足元については「貿易摩擦の影響は限定的だ」という認識で、3カ月に一度改定する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2018年の経済成長率を0.1ポイント引き下げて1.4%とし、2019年と2020年度は据え置きました。

ただし、2018年~2019年年度の消費者物価指数の見通しは0.1~0.2ポイントずつ引き下げています。

米中貿易戦争によって、中国や米国の経済が失速すれば、足元で堅調な外需が減退し、日本経済に大きなダメージを与えることになります。

その結果、日銀の経済・物価見通しは、今後、下方修正せざるを得ない可能性が高まっています。

(出典:産経新聞)

2019年からは、消費税を10%へと引き上げすことを政府は予定しているため、景気浮揚につながる政策を打たないと内需の拡大に期待できる状況ではありません。

消費税10%引き上げを決定事項として一切変更するつもりがないのであれば、安倍政権は野党と国民から強い風当たりを受けることになります。

それは2019年の参議院選挙にも大きく響いてくることとなるでしょう。

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