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中国トップ女優・范冰冰(ファン・ビンビン)の金銭スキャンダルは、米中関係の悪化を反映している!?

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中国トップ女優の范冰冰(ファン・ビンビン)は、6月2日に自身のブログを更新したのを最後に公の場に姿を見せず、約4カ月間も消息が分からなかったが、中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」を通じて謝罪するコメントを発表しました。

脱税に対する范冰冰(ファン・ビンビン)の謝罪

ファン・ビンビンと関連企業が映画の出演料に関して、偽の契約書を作成することで脱税し、9月30日に中国の税務当局から追徴課税や罰金などを含めて約146億円の支払いを命じられていたのです。

以下、范冰冰が投稿した内容です。

「共産党と国家の素晴らしい政策や人民の応援がなければ、范冰冰(ファン・ビンビン)はありませんでした。信頼を裏切ってしまい、申し訳ありません」

「私は今まで経験したことがない痛苦を経て、深く反省しています。自らが行った行為を深く恥じております。長らく国家や社会の利益を損ねてきました。税務調査を受け、ひたすら反省しています。今後は法律を遵守していきます。これより誠意を尽くし、心配してくださった友人や皆さま方に向き合っていきます。この度、最終的な法律の処罰が決まりました。若くして芸能界に入り、努力を重ねて世界の舞台にも出ることができました。しかしながら、党や国家の政策、人々の支持を損ね、自身も傷つけたのです。規則や秩序を尊重して、よい作品を通じて信頼回復に努めていきます。あらためて、映画ファン、友人やみなさまに向けてお伝えします。本当にごめんなさい。」

范冰冰(ファン・ビンビン)は、10代で芸能活動を始め、出演した中国映画が次々とヒットしただけでなく、日本でもサントリーのウーロン茶のCMや日中合作映画「墨攻」に出演、ハリウッド作品の映画「X―MEN フューチャー&パスト」でも活躍し、米経済誌フォーブスでは、年収50億円と「世界で最も稼いだ女優」の1人に選ばれています。

(出典:朝日新聞)

今後の活動については「素晴らしい作品をお届けできると信じている」とし、追徴課税と罰金の全額を支払って復帰をめざす考えを表明しました。

米国の俳優ブルース・ウィリスと共演した戦争映画「大爆撃」の宣伝用ポスターからは、范冰冰(ファン・ビンビン)の姿が消され、上映も延期されるなど映画界に影響が広がっています。

また、国税当局は2018年末までに罰金などを納付しなければ、刑事責任を追及するとしています。

范冰冰(ファン・ビンビン)は謝罪文で「全力を尽くして困難を克服し、資金調達して納付する」とコメントしています。

そのため、約3ヶ月間で范冰冰(ファン・ビンビン)が約146億の資金を納税できるのか、注目を集めています。

中国の芸能人に対する手厚い保護が、手の平を返したように厳しくなる理由

中国政府は、俳優や芸能人の低い税率と高騰する出演料が「拝金主義を助長する」と問題視し、范冰冰(ファン・ビンビン)に対する税務調査を「見せしめ」にしているという見解が主流となっています。

彼女が「陰陽契約」という二重契約書を使っての脱税疑惑が浮上したのは2018年5月でしたが、中国の国家税務総局が出演料の税率を従来の6.7%から42%へと大幅に引き上げると発表したのが8月です。しかも、1月~6月までさかのぼって納付するように義務付けています。

このことを受けて、8月11日、映像ストリーミング配信の中国3大企業である愛奇芸(iQiyi)、優酷(Youku)、騰訊(テンセント)を含む6社が、芸能人の高額報酬をボイコットすると共同声明を発表しました。

さらに13日、華誼兄弟集団や横店影視といった最大手の映画会社を含む約400社が、「業界の秩序を守り、クリーン化を図り、作品のクオリティを高めるため」という名目で、出演者の高額報酬をボイコットすると表明しています。

愛奇芸な(iQiyi)など6社が発表した声明では、「キャストの出演料は製作費の40%以内」「メーンキャストへのギャラは出演料全体の70%以内」といった要求が示され、俳優や芸能人の驚くべき高額報酬時代は、今回の一件を受けて終わりを告げる可能性が高まりました。

日本の映画市場は2500億円前後で横ばいが続いていますが、中国映画市場の発展は目覚ましく、年間興行収入額は2017年に1兆円を超えました。世界一はハリウッドのあるアメリカで1兆2300億円です。

2018年には、中国映画市場はこの勢いのままアメリカを抜くことになりました。

そこに「待った」がかかったのですが、興行収入が米国を抜き、世界一となった中国の映画界は脱税など不正行為が横行しているとされており、税務当局は他の俳優に対しても、年内に脱税を認めて追加納税すれば、行政処罰や罰金は免除すると「自首」を呼び掛けています。

中国政府が高い出演料に対して「拝金主義を助長する」とした背景には、

  1. 俳優や芸能人は中国のイメージアップのために政府によって手厚い保護を受けていたこと
  2. 国内で中産階級がなかなか増えないこと
  3. 所得格差の拡大傾向が強くなっているの対して、多くの一般市民が不満を抱いていること

への一時的な「ガス抜き」効果を見込んでいるからです。

現在、中国はアメリカのトランプ大統領による強圧的な貿易戦争に巻き込まれ、経済的な先行き不透明感が広がっています。

そのため、よほど上手く舵取りをしないと、中国は「混沌と無秩序」というカオス状態に陥るリスクがあります。

アメリカのトランプ大統領も脱税疑惑で大きく報道される

その一方、アメリカでは、トランプ大統領が一族の巨額脱税に関わったとするニューヨーク・タイムズ紙の報道で中間選挙前に大きく揺れ動いています。

彼の弁護士は「100%虚偽だ」と反論していますが、ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領が「兄弟とダミー会社を作り、両親(共に故人)が所有する多数の不動産価値を低く見せかけるなどして脱税に関与した」として、「1990年代に、あからさまな詐欺を含め、疑わしい課税対策」に関わっていたと伝えています。

ニューヨーク州税務・財務局は、「ニューヨーク・タイムズ紙の記事に書かれた告発内容を点検し、あらゆる適切な調査の道筋を積極的に追求している」とコメントしました。

報道内容はいずれも数十年前で時効が成立しているため、これで大統領が刑事捜査の対象になる可能性は低いですが、税逃れに対する罰金には時効がないという意見もあります。

ニューヨーク・タイムズ紙は、

「トランプ氏は長年に渡り、自分は裕福な不動産業者だった父親からほとんど何の支援もなく、自力で巨万の富を築いた成功者だと、自分のイメージを広めてきた。しかし、10万ページ以上に及ぶ大量の書類をもとにした調査報道で、トランプ氏が実は現在の価値で少なくとも4億1300万ドル(約470億円)を父親から受け取った」

「トランプ氏にこの資金が支払われたのは主に、両親の租税回避を手伝ったからで、両親から数百万ドルも譲渡されたことを誤魔化すため、兄弟とダミー会社を作った」

「トランプ氏の両親が子供たちに譲渡した金額は10億ドル以上に上り、本来の課税額は5億5000万のはずだったが、納税記録によるとトランプ氏と兄弟が納めた税金はその5%程度に過ぎない5220万ドルだった」

と報道しています。

大統領の弟、ロバート・トランプ氏はこの報道に対して、一族を代表してコメントし、「あらゆる贈与税や相続税の申告は適切に行われ、必要な税金は納めた」と反論しました。

また、トランプ大統領もツイッターで「極めて古く退屈だ」と批判し、「これまで見たことがない」と報道内容を完全に否定しました。

(出典:NEWS JAPAN)

アメリカでは、大統領候補が「納税申告書を公開」するのが慣例となっていますが、トランプ大統領は選挙前の2016年から現在に至るまで、納税申告書を公開していません。

もしも、ニューヨーク・タイムズ紙の報道内容が事実であれば、自力で財を成し「不動産王」になったとするトランプ大統領の主張が虚偽だったこととなり、11月6日の中間選挙において、野党である民主党が攻撃に拍車をかける材料となります。

https://norain-norainbow.work/?p=876

アメリカが仕掛けた圧倒的に有利な米中貿易戦争

「貿易戦争により米中関係が悪化」したことで、両国の摩擦は長期化し、事態を打開する目途は全く立っていません。

現在は歩み寄りどころか、むしろ対立激化に向かっています。

トランプ大統領は9月25日の国連総会演説で「中国との貿易不均衡を容認することはない」と改めて強調し、さらに「中国が11月の米中間選挙に介入している」と批判しました。「習近平とはもう友人でないかもしれない」とまで発言しています。

投資銀行のJPモルガンは、米国が中国への追加関税を限界まで発動し、ドル高・人民元安が進み、米中貿易戦争はより激しくなるだろうと分析し、「本格的な貿易戦争が、2019年の新たな基本シナリオになった。短期的に米中間の対立が和らぐ明確な兆しはない。」と予測しています。

トランプ政権は9月17日に中国製品約2000億ドル(約22兆9000億円)相当に10%の制裁関税を課し、中国政府も米国からの輸入品600億ドル相当への追加関税を発動しました。

こうした中で、中国経済は輸出が鈍化し、経済成長率が低下し、不景気になる懸念が生じています。実際に、中国景況感は2年ぶりの低水準で、米国との貿易戦争の影響で貿易関連の指標悪化が目立っています。

出典:日経新聞

この結果、雇用不振の兆しが出ており、輸出低迷で民間企業の倒産が相次いでいることが原因と見られます。

その一方、アメリカはニューヨークダウが史上最高値を更新し、景気は絶好調の最中にあります。

結局、輸出入額やその中身を考えると、貿易戦争をして大きなダメージを被るのは間違いなく中国の方です。

アメリカは中国にとって最大のお得意様であり、喧嘩をしても損をするのは中国だからです。

具体的に言えば、中国がアメリカから輸入している製品について、これに関税をかけて苦しむのは、アメリカよりもむしろ中国の方です。

ハイテク分野では、CPUやシリコンウェハーといった中心技術はアメリカや日本が保有しているので、中国がこれらに関税をかければ、中国の通信メーカーが大きな打撃を受けてしまいます。

加えて、中国はアメリカの大豆やトウモロコシといった家畜飼料の最大の輸入国なので、これらに関税をかければ、中国国内の豚肉などの畜産品価格が高騰することは明らかです。

もし貿易戦争が解決しなければ、中国共産党の一党独裁体制が危ぶまれる事態も

范冰冰(ファン・ビンビン)の脱税とトランプ大統領の脱税疑惑は、一見すると無関係に思えますが、実は遠くて近い関係があります。

中国共産党の一党独裁体制において、一番に重要視しているのが正統性という大義名分です。

中国の歴史では、徳を失った皇帝は、天命によって徳のある者にとって代わられる「易姓革命」を繰り返してきました。

つまり、皇帝に徳がなくなれば、正統性の根拠がなくなり、退陣を迫られることとなります。

また、貧民層が拡大して、各地で反乱が起これば、それは皇帝の徳が衰えていることを意味します。

中国では、1978年から鄧小平を中心として改革開放の経済政策を実施し、市場経済への移行が推進されきました。それは、中国共産党が、資本家によって搾取されてきた貧民層を共産主義革命によって解放することを使命としてきたからです。

ところが、逆に改革開放以降の経済成長によって中国では貧富の差が拡大していきます。

米中貿易戦争によって、食料品が高騰し、貧民層が満足に食べられなくなれば、それは中国共産党の正統性を損なうことにつながります。

中国共産党の政策に基づく経済的発展こそが、習近平総書記の政権基盤の安定につながるのです。

アメリカとの貿易戦争で、中国経済が衰退し、習近平政権への信頼が揺らいでしまうと、中国共産党にとっては大きな痛手となります。

習近平総書記を毛沢東と並ぶ権威化、神格化を推し進めてきたにも関わらず、全てが台無しになってしまうからです。

以上の観点から、中国は、最終的には、経済破綻の道を選ぶか、共産党一党独裁体制の崩壊を選ぶかの二者択一を迫られることになるでしょう。

トランプ大統領は、その「人となり」が嫌悪され、政権を潰したい勢力が脱税の疑惑をかけていますが、少なくとも世界最大の独裁国家である中国を牽制するという大きな貢献を果たしています。

この貿易戦争の敗北者は、中国だとすでに確定しているといっても過言ではありません。

アメリカとの妥協点を探ることができない今のままでは、中国は食料、エネルギー、技術の多くを海外に依存しているため、貿易戦争を通じて、徐々に力を失っていくことになります。

もし、こうした敗北を避けようとするならば、共産党の一党独裁体制を改め、人民元を変動相場制にして、規制を撤廃して外国資本を受け入れる大きな覚悟を持つ必要があります。

さもないと、アメリカは中国に対する強硬な姿勢を止めないでしょう。

范冰冰(ファン・ビンビン)の金銭スキャンダルが、今更になって大きくクローズアップされているのは、習近平政権が中国を今後どのように政策運営していくのか、共産党の正統性を保持できるのかという問題と裏表一体の関係にあります。

トランプ大統領は、自らの金銭スキャンダルを気にすることなく、アメリカ民主党からの妨害を退けて突き進んでいくでしょうが、自国の有名セレブが自粛モードに入るよう中国政府が働きかけたことは、中国共産党自らが大きな転換期を迎えていることと無関係ではありません。

ペンス副大統領は10月4日、国際慣行を無視した経済活動や覇権主義的な海洋進出を展開する中国に「決して屈しない」と訴え、中国に態度変更を厳然と求めていくと表明しましました。

具体的には、東シナ海の尖閣諸島は「日本の施政権下にある」と主張し、南シナ海でも「航行の自由」作戦を積極的に実施していくと述べ、インド・太平洋地域におけるアメリカの存在感や日本との「同盟関係」を強調したのです。

米中貿易戦争はトランプ大統領だけの意向によるものではなく、アメリカが経済分野だけでなく安全保障も含め、「全面対決する」ことを公式の対中国政策とする立場を明確に打ち出しました。つまり、政府や行政に携わる当局者が一致して協調していることを意味しています。

アメリカは中国との間で、世界の経済、技術、地政学的な支配権に関して、お互いの存亡に関わる争いに勝利しようとしているのです。

【10月5日更新】

ペンス副大統領は、中国がアジアやアフリカ、欧州、南米の国々に数十兆円規模のインフラ開発融資を行うことで、相手国を「債務の罠」に陥れていると批判し、中国に対抗した新たな融資政策を打ち出す方針を表明しました。

また、国防総省は、アメリカ軍が主要兵器の重要部品の調達で中国に大きく依存していることを危惧しており、中国の工場で製造されたコンピューターのサーバー用のマザーボードに情報窃取を目的とした超小型のマイクロチップが秘密裏に組み込まれたり、アップルやアマゾンなどの米企業約30社に納入されていたことが発覚したと公表しました。

これらの事態を受けて、今後、アメリカは中国製品の排除を積極的に行い、米国製品の調達強化を図るのは確実と思われます。

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