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上院と州知事選で勝利したトランプ大統領は、「ねじれ議会」でも2020年の大統領選挙に向かって突き進む!




アメリカのトランプ大統領は、2018年11月6日の中間選挙において下院で民主党に敗北し、2019年1月以降、上下両院で多数派が異なる「ねじれ議会」が生じることになりました。

その背景には、国内では女性やマイノリティー(少数派)、白人以外の移民を侮辱するような発言や無責任な嘘の数々を繰り返し、アメリカ社会の分断に拍車をかける態度に、報道機関や反トランプ支持者は酷評してきたという経緯があります。

また、国外では、北朝鮮やロシアといった強権的な指導者との親密さを自演しますが、貿易問題・通商政策では日本・韓国・中国・カナダに対して、2国間の交渉へと持ち込み、高関税という切り札を使って容赦のない脅しをかける取引が行われています。

そうしたトランプ大統領の傍若無人な振る舞いに鉄槌を下すべく、「若者・女性・ヒスパニック系移民」が共和党に「No!」を突きつけ、民主党の候補者として立ち上がるか、民主党の支持者として精力的に活動していました。

上院で過半数を維持し、アイオワ・フロリダの州知事選挙で勝利を収めたことで、2020年の大統領選挙は、共和党に追い風が吹く

ところが、彼のツイッターでは中間選挙は共和党にとっても自分にとっても、「大成功だった!」と述べています。

このコメントは本気なのでしょうか?それとも負け惜しみなのでしょうか?

実は、今回の中間選挙をトランプ大統領の過去2年間の通信簿と考えると、100点満点のうち75点くらいの好成績だったと言えます。

その理由として

①共和党が、上院で51議席から52議席に増やして過半数を維持できた。

②大接戦が予想された遊説先で11人中9人が勝利を収めた。

③2020年の大統領選で重要な州知事選挙でも共和党が勝利を収めた。

ことが挙げられます。

確かに、追加減税・メキシコとの国境の壁建設・オバマケア廃止といった重要法案は、多数派となった民主党の下院によって阻止され、トランプ大統領の意向が通らない事態が何度も発生するでしょう。

何故なら、予算に絡む政治的な法案については、「議会の方が大統領よりも権限を強く持っている」からです。

今後、トランプ大統領が最も困惑するであろうシナリオは、10年間で1兆7千億ドル(185兆円)に増額するという巨大インフラ投資が、下院で民主党に阻まれることです。アメリカのインフラは、道路や橋、ダム、鉄道、上下水道などで老朽化が目立っており、新規投資や更新の需要は大きいです。ただし、財源の捻出など資金の確保が最大の課題と言えます。

法人税減税の政策は、企業の好調な業績につながるという形で大成功を収めました。しかし、米中貿易摩擦をきっかけとして、アメリカの株価は不安定になっています。もし、巨大インフラ投資を実現できれば経済成長を確実に後押しします。でも、この法案が通らなければ、まだ経済的な潤いを実感できていないトランプ支持者が離れていく可能性もあります。

このように、トランプ大統領にとって重要な予算に関連する法案が、下院の民主党の反対によって、否決され、アメリカ経済が行き詰まる兆候が生じた場合には、決して反省することなく、確実に「民主党が邪魔をしているからだ」という主張を展開するでしょう。

躾の教育を受けていない幼い子供レベルの思考回路で、「自分は決して悪くない、相手が絶対的に悪い」という批判的な言い訳をするのは間違いありません。

加えて、自分の意向を反映する政策を強引に通したい場合は、これまでと同じく頻繁に大統領令を出すことで、世の中全体を動揺させることでしょう。

しかし、2年後の大統領選挙を見通すと、トランプ大統領の再選が一歩近づいた中間選挙の結果となりました。というのも、アメリカ全体の50州の中で、36州が改選となる州知事選において、共和党が20州、民主党が16州の勝利となり、共和党:民主党=27:23で、非改選の7州と合わせれば、連邦議会の上院だけでなく州知事も共和党が過半数を制したことになります。

【11月19日更新】州知事選において、共和党がラストベルト地帯で重要なオハイオ州と、人口が2000万人と全米で3番目に多いフロリダ州が完全に勝利を収めました。

フロリダ州は、温暖な気候で白人富裕層の老後の移住先として人気が高く、観光地としても有名です。

その一方で、カリブ海周辺出身のキューバ系と中南米出身のヒスパニック系の有権者が人口の4分の1を占めています。

2020年の大統領選挙では、任期中に2020年の国勢調査に基づいて下院議員の選挙区の区割りの変更と、選挙人数の割り振りを行う州知事が非常に大切な役割を担います。

州内で強い権限を持つ知事のポストを握った政党は、地元で有利に支持基盤を固めることができるからです。その中でも特に強い影響を持っているのが、オハイオ州とフロリダ州です。

アメリカでは、州知事が大きな権限を持っており、医療保険制度や不法移民対策など国家レベルの政策にも訴訟などを通じて影響を及ぼすことができます。

下院選挙区の区割りは10年ごとに変更されますが、州知事が区割り案に拒否権を発動することで、自らが所属する政党に有利な区割りを促すことが可能となります。

フロリダ州の上院選と州知事選で選挙結果が再集計を行う異常事態に

2年後の大統領選でも勝敗の鍵を握るフロリダ州において、大きな混乱が起こっています。

開票直後は、上院選と州知事選の双方で共和党が勝利を宣言しました。

具体的には、

・上院選では、民主党現職のネルソン候補と州知事から鞍替えした共和党のスコット候補が戦い、スコット候補が6日に早々と勝利を宣言しました。

・州知事選でも共和党のロン・デサンティス候補がリードし、民主党のアンドリュー・ギラム候補は敗北を宣言しました。

ところが、未集計の票が見つかり、手作業による再集計を行ったところ、

・上院選はスコット氏が50・09%、ネルソン氏が49・91%で0・18ポイント差。

・州知事選は共和候補が49・61%、民主候補が49・17%で0・44ポイント差。

という僅差の結果となりました。

この異常事態に、8日、共和党のスコット候補は「ミステリーだ。捜査当局の調査を求める」と主張し、トランプ大統領もツイッターで「捜査当局が新たな不正行為を調査している」とコメントしました。

そうした申し立てに対して、フロリダ州の捜査当局は、「不正行為は認められなかった」と調査を打ち切っています。

2000年の大統領選挙で起こった不可思議なミステリー  一部には陰謀論も浮上!

実は、フロリダ州では、2000年の米大統領選でも再集計が行われています。

当時、最初はゴア大統領候補の当確が報道されましたが、すぐに当確が取り消され、翌日未明にはブッシュ大統領候補の当確が報道されました。

フロリダ州では、選挙の得票数の差が総票数の0.5パーセント以下である場合、機械による再集計が行われる法規定があります。

機械による再集計が行われると、両候補の得票差は1000票程度に縮小しましたが、ブッシュの優勢は変わりませんでした。

ゴア陣営は、フロリダ州法の定める抗議申立手続きを踏まえて、手作業再集計を求めました。これを受けて再集計が開始されましたが、ブッシュ陣営は、手作業再集計の中止を求めて、連邦地区裁判所に訴訟を起こしました。

これに対して、ゴア陣営はフロリダ州州最高裁判所に提訴したところ、裁判所は手作業再集計の算入と、集計結果期限を延長する判決を下しています。

しかし、マイアミ=デイド郡が手作業では26日までに集計が間に合わないと判断し、再集計を中止しました。

ゴア陣営はこれに対する訴訟を起こしましたが、フロリダ州最高裁に却下され、ブッシュ候補が291万2790票、ゴア候補が291万2253票として、537票差でのブッシュ候補の勝利が公式認定されました。

ゴア陣営はフロリダ州最高裁に再提訴したところ、再集計の再開と、提出期限に間に合わなかった有効票算入を認めました。これによりわずか150票の僅差となり、ブッシュ陣営は連邦最高裁に差し止め請求を行ったところ、連邦最高裁は差し止めを承認し、再集計を禁じる判決を下して、ブッシュ候補が勝利とする公式認定を確定させました。

ゴア陣営は「最高裁判決に同意できないが従う」と宣言し、こうして争訟の決着が付きました。

フロリダ州の上院と州知事選の再集計にトランプ大統領が不満の声をツイッターで述べる

フロリダ州のケン・デッツナー州務長官は、機械による再集計結果は2018年11月15日午後3時(日本時間16日午前5時)に得られる予定だと表明しました。

トランプ大統領はこの再集計に強い不満を感じており、訪問中のフランスからツイッターで「フロリダで大きな選挙2つが盗まれようとしている! 私たちは注意深く監視している!」とコメントしています。

同じくフロリダ州の選挙結果について強い牽制をしています。

これまで、フロリダ州のアフリカ系アメリカ人の移民のうち、約10人に1人が、元受刑者などの理由で投票権が剥奪されていました。ところが、住民投票の結果、法律が改正され、彼らの140万人の投票権が回復することになりました。

投票権を回復したアフリカ系アメリカ人の多くが、移民に対して寛容な民主党を支持する可能性が高いと言えます。

2020年の大統領選挙で、もし、この140万人の票が民主党に流れれば、トランプ氏はフロリダ州を失い、大統領に再選できないことも十分に想定できます。

フロリダ州は選挙の度に共和党と民主党の勝敗が変わる「スイング(揺れる)州」として有名で、大統領選の勝敗を決める選挙人数が29人と非常に多い重要な州です。

フロリダ州の上院と州知事選の再集計がようやく確定し、共和党が勝利を収める

【11月19日更新】36州で改選された知事選の結果が確定しました。共和党は、改選前の26から20に減らしましたが、フロリダ州における知事選の再集計では、共和党のロン・デサンティス候補の得票数が、民主党のアンドリュー・ギラム候補氏を上回り、共和党が勝利することが決まりました。

また、ジョージア州の知事選でも、大量の不在者投票が集計されていないという混乱がありましたが、不法移民に対する過激な発言で知られる共和党のブライアン・ケンプ候補者が勝利を収めました。

さらに、米中間選挙で大激戦となったフロリダ州の上院選の再集計の結果、共和党のリック・スコット候補が民主党現職のビル・ネルソン議員に勝利しました。

【11月28日更新】アメリカ中間選挙で決着していなかった南部ミシシッピ州の上院補選の決選投票(共和党シンディ・ハイドスミス氏VS民主党マイク・エスピー候補)が27日に行われ、共和党現職のシンディ・ハイドスミス候補の当選が決まりました。

これで上院(定数100)の全改選議席が確定したことになります。

2019年1月に召集される上院の議会は、共和党53議席、民主党47議席で新たにスタートします。

トランプ大統領が懸命に現地入りした結果、2018年中間選挙では、共和党が改選前の51から議席を2つ増やしました。

歴史的に政権与党が順調に過半数を占めることが少ないアメリカの中間選挙

民主党ビル・クリントン大統領のケース

クリントン大統領の1期目

民主党のビル・クリントン氏が1期目の大統領となった1994年の中間選挙では、上院と下院の両方で敗北しました。

政策に一貫性がないことが非難され、 共和党が上院と下院の両方で多数派となったことで、少数派としての政権運営を余儀なくされました。

しかし、経済政策を重視し、アメリカ経済の中心を重工業ではなくIT分野と金融に重点を移したことで、第2次世界大戦後において2番目の好景気をもたらしています。

こうした経済政策の成功もあって、クリントン氏は、1996年の大統領選にも勝利し、再び政権を担うことになりました。

クリントン大統領の2期目

2期目の1998年の中間選挙では、上院では共和党の勢力が変わらず、下院でも僅差で共和党に敗北したことで、クリントン政権は1期目と同じく少数派の立場でした。

この年の11月に中間選挙を控えていましたが、1月にクリントン大統領はホワイトハウス実習生のモニカ・ルインスキーとの不倫疑惑が報道され、8月に「不適切な不倫関係」を法廷証言とテレビ演説で認めたため、前代未聞のスキャンダルに発展しています。

下院は大統領を弾劾訴追しましたが、上院が無罪の評決を下し、この事件は幕引きとなりました。

それでも、レーガン大統領時代に減税や軍事費の増大で肥大化した財政赤字を解消して、2期目の2000年には、2300億ドルの財政黒字を達成するという快挙も成し遂げています。

共和党ジョージ・ウォーカー・ブッシ大統領のケース

ブッシュ大統領の1期目

共和党のジョージ・ウォーカー・ブッシュ氏が1期目の大統領となった2002年の中間選挙では、上院で過半数を奪還し、下院でも過半数を維持しました。

米国の経済学者は「ニューエコノミー」「ドットコム・ブーム」としてインターネット事業の勃興を賞賛しましたが、FRBの利上げをきっかけに関連企業の株価は暴落し、ITバブルの崩壊が起こりました。

その結果、多くのIT関連ベンチャーは倒産に追い込まれ、同時に製造業の人員削減が起こったため、2002年の失業者数は約2000万人に達しています。

ITバブル崩壊と個人消費の落ち込みによって、アメリカ経済は深刻な不況に見舞われました。

その最中に2001年9月11日の同時多発テロ事件が発生しました。ブッシュ大統領は、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」「ならず者国家」として指定し、同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビン・ラディンの身柄引渡しをアフガニスタンのタリバン政権に要求して、「テロとの戦い」に屈しないと強いリーダーシップを誇示しました。この姿勢が国民に評価され、上院と下院の優位性にも影響を与えています。

ブッシュ大統領の2期目

しかし、2期目の2006年中間選挙では、大量破壊兵器が最後まで見つからずにイラク戦争を行ったことに対して、アメリカ国民はブッシュ大統領に懐疑心と反感を抱いたことが大きく影響しています。

支持基盤であったキリスト教保守派からの信用も失い、与党である共和党は民主党に大敗しました。

ブッシュ政権は、ネオコン(新保守主義派)と呼ばれる閣僚が重要なポストの多くを占めていたため、ブッシュ氏本人や政権関係者が所有及び関与する軍産複合体から莫大な金銭的利益を得ていたことに非難が集中しました。

イラク戦争やアフガニスタン侵攻などの武力行使は、中東の原油に対する支配と利権拡大を図ることが最大の目的だという世間の疑念が渦巻き、支持率は低下の一途を辿りました。

結局のところ、共和党は完全に敗北し、民主党が上院と下院の両方での多数派に返り咲く結果となりました。

民主党バラク・オバマ大統領のケース

オバマ大統領の1期目

民主党のバラク・オバマ氏が1期目の大統領となった2010年中間選挙では、共和党が上院で過半数を奪還し、下院でも大差を付けて過半数を奪還したため、非常に困難な政権運営となりました。

就任直後は初の黒人大統領として圧倒的な支持を集め、2009年には「核なき世界」への活動が評価され、ノーベル平和賞を受賞しています。

ところが、彼の政策は抽象的、理念的で具体性に欠けることが多いと次第に非難を浴びるようになりました。

実際にアメリカの景気回復には程遠い状態が続き、リーマンショック後の金融危機と信用収縮、企業の資金繰りの行き詰まり国内の消費低迷と雇用情勢の悪化は改善しませんでした。

さらに、オバマ大統領が指名した政府高官らの賄賂や金銭スキャンダルが相次いで発覚し、縁故(コネ)や多額の献金を行った支援者が指名されるという不公平な人事が厳しく非難されています。

オバマ大統領の2期目

2期目の2014年中間選挙では、共和党が上院と下院の両方で圧倒的に勝利し、民主党が大きく議席を減らす結果となりました。

2013年にシリアで化学兵器サリンが使用されたと報道された際に、オバマ大統領は国連安保理の決議なしでシリアへ軍事介入する姿勢を見せました。しかし、アメリカ国内では、アサド政権に関するオバマ大統領の情報収集と発信の仕方に対する非難の声が多数に上りました。

このように、これまでのアメリカ大統領中間選挙では、トランプ大統領に限らず、クリントン大統領しかり、オバマ大統領しかり、政権与党が敗北し、議席を減らしてきたという歴史があります。

中間選挙の年 上院  下院 
1994年
共和党 44→52  民主党 56→48 共和党 176→230 民主党 258→204
1998年
共和党 55→55  民主党 45→45 共和党 228→223 民主党 206→211
2002年
共和党 49→51  民主党 50→48 共和党 221→229 民主党 212→204
2006年
共和党 55→49  民主党 43→51 共和党 230→202 民主党 201→233
2010年
共和党 41→47  民主党 57→51 共和党 179→242 民主党 256→193
2014年
共和党 45→54  民主党 53→44 共和党 234→247 民主党 201→188

※2006年の上院で過半数を取った民主党の中には、民主党系の無所属である2議席が含まれる。

トランプ政権のファシズム的な国家主義に奮い立つオバマ前大統領とサンダース上院議員

今回の中間選挙では、民主党が大統領経験者は政治に直接関与しないという慣例を破り、何とオバマ前大統領が選挙応援の前面に立つこととなりました。

過去の政治的な手腕の是非はともかくとして、彼にはカリスマ的な演説能力があり、多くの人を惹き付ける魅力と高い人気を今でも維持しています。2016年の大統領選挙では、有権者がオバマ氏に、3期目も政権を担って欲しいという熱烈な要望さえありました。

しかし、オバマ氏は「ゴメン、それはできないんだよ」と冷静に諭すように答弁していました。

バーニー・サンダース上院議員は、トランプ政権や共和党は一部の富裕層を優遇しているに過ぎないと批判する論調を粘り強く訴えてきました。

トランプ大統領が「廃止・取り消し・無効」にすることを画策しているオバマケア(医療保険制度)の維持と充実を主張し、資本主義の価値観を肯定しない若者や、国家の財政的援助に頼る社会的弱者に民主党への支持をアピールしていたのです。

もし、今後の2年間においてオバマケア(医療保険制度)が、過半数を占める共和党に否決されたとしても、次の2020年の大統領選挙では、民主党が上院で勝利を収めることで、必ずオバマケアを可決し、その内容を充実させるという政治手法を展開することでしょう。

共和党支持派=「白人・中高年」、民主党支持派=「若者・女性・移民」 という構図を知れば、アメリカ社会の分断が見えてくる

このようにアメリカ国内の分断と対立がさらに深まった中で中間選挙が行われたのですが、投票結果には、明らかな特徴が認められました。

それは、

・共和党支持派=白人・中高年

【男性51% 白人54% 地方61% 小さな町52%】

・民主党支持派=若者・女性・移民

【女性55% アフリカ系88% ヒスパニック系62% 都市部66%】

という構図です。

共和党は、地方に住んでいる白人男性の労働者に支持されており、民主党は、都市に住んでいる女性・移民・マイノリティ(社会的少数派)に支持されているという特徴があります。

こうした結果が、2020年の大統領選挙にどのように影響してくるのか、非常に楽しみです。

トランプ支持派の白人や中高年は、アメリカ経済をもっと繁栄させたい願っており、その恩恵はトランプ大統領が政権を担うことで得られると考えています。

しかし、保護主義と自国第一主義に伴う貿易摩擦は、必ず景気の腰折れを引き起こすことになるでしょう。

何故なら、他国の輸出品に高い関税をかけることで、アメリカ国内の物価が上昇するという結果を招くからです。

自分達だけ得をしようという浅はかな欲望が、ブーメランのように跳ね返って、相手だけでなく自分達も損をすることになるのです。

現在のように世界がグローバルにつながっている時代においては、自国だけの利益を追求することは極めて難しいです。強いて言うならば、昔の江戸時代のように「鎖国」をするしか方法はありません。

自由と民主主義を掲げるアメリカが、今更になって「鎖国」政策を取ることはまずあり得ないです。

とにかく、過半数を取った民主党は、トランプ大統領を徹底的に追い詰めることで、共和党政権の弱体化を図ろうとするのは間違いありません。

民主党は、これまで以上にトランプ政権と対峙していきます。

トランプ大統領とロシアとの黒く汚れた関係(資金洗浄・脱税・ハニートラップ)を深く調査して、元ポルノ女優との不倫に対する口止め料など金銭スキャンダルを丸裸に暴き、過去の不正行為を徹底的に追及するでしょう。

そして、最大の攻撃の武器となるのは、この中でもトランプ大統領とロシアとの関係、すなわちロシアゲート疑惑です。

連邦議会の下院は大統領弾劾の訴追権を持っています。

大統領の罷免には上院の3分の2の賛成が必要なので、共和党内で多数の裏切り者が出ない限り、罷免に至ることはありませんが、弾劾の訴追を行っている間は、少なくとも大統領の心の中を大きく揺り動かし、強気な姿勢を削ぐことは期待できます。

貿易摩擦と他国との対立を生み出すトランプ流の通商政策は絶対に変わらない 今、日本がTAGという名の下に置かれている危機!

トランプ大統領は中間選挙において下院で民主党に敗れましたが、彼の政治的態度が変わることはないでしょう。

特に外交・安全保障・貿易問題・通商政策について、変更路線に舵を取ることはまず考えられません。

国内政治で民主党の反対と抵抗に遭い、行き詰まりが明らかになれば、国外政治では保護主義的な政策をさらに推し進めていくはずです。共和党が上院の議席を伸ばしたことで、トランプ大統領の通商政策が議会で通過しやすい条件が整ったと捉えるべきです。

特に日本とアメリカの貿易を巡る関係においては、日本の立場がより厳しくなると想定しています。

2019年1月に両国で交渉が開始されるTAG(物品貿易協定)は物品だけの協定ではないのです。

TAGには、実はその内容にサービスも含まれており、韓国が苦渋を飲まされたFTA(自由貿易協定)と何ら違いはないと言えます。

安倍首相は、「日本とアメリカの間ではFTA交渉をしない」と明言してきましたが、ペンス副大統領は、「日本とアメリカの間でFTA交渉を始める」という発言を行っています。

しかし、日本はTAGという曖昧な用語を使って、FTA交渉入りを大々的に否定してきました。

アメリカ大使館では、日米共同声明の英文を次のように翻訳しています。

米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する。

つまり、「物品」も「サービスを含むその他重要分野」も同列に扱っているのです。

これは、日本とアメリカにおける自由貿易協定(FTA)以外の何ものでもありません。

しかし、安倍首相としては、2019年の参議院選挙が終わるまでは、絶対にFTAとは言えず、大きな譲歩を伴う結論は出せない、という差し迫った状態にあります。

森友学園問題における財務省の公文書改ざんがありましたが、「FTA」を「TAG」という用語で誤魔化したのは、同じレベルの捏造だと断定しても過言ではないでしょう。

日米共同声明の英文には、実質的には「FTA」交渉に入るという内容が書かれています。

日本政府が発表した日本語文とアメリカ大使館が発表した日本語文が全く異なっていることが問題なのです。

もし、日本とアメリカが2国間だけでFTA交渉を行えば、北朝鮮や中国など近隣諸国に安全保障上の大きな問題を抱えている日本が圧倒的に不利になります。

アメリカはこうした外交上の弱みに付け込み、日本から輸入している自動車に25%の関税をかけるという脅しを使いながら、アメリカから輸出する農産物(牛肉・大豆など)に対する関税を大幅に削減させる要求をしてくるでしょう。

また、サービスを含む2国間交渉となれば、日本の政府関係者が心配しているように、アメリカから「えげつない要求」を突きつけられる危険性があります。

既に10月27日の時点で、トランプ大統領は中西部インディアナ州で開かれた農業団体向けの演説で、日本が市場を開放しない場合は「日本車に20%の関税をかける」と公言しています。

日本としては、農産物での市場開放については、TPPの内容が最大限だとする方針ですが、アメリカが日本の立場を尊重する保証はどこにもありません。

パーデュー農務長官は、「目標は環太平洋経済連携協定(TPP)を超えたものになる」と表明しており、日本の主張と食い違う発言が米高官から相次いでいるのが「今目の前にある現実」なのです。

世界貿易機関(WTO)のルールを無視して、日本がアメリカに不平等な貿易協定を結ばされる日が刻々と近づいているかもしれません。

世界貿易機関(World Trade Organization・WTO)は、1995年1月1日設立された国際機関。本部はジュネーブにあり、自由貿易の推進を目的とするが、 国際貿易のルール作りと多国間の貿易交渉の場を提供すると同時に、国際貿易紛争を処理する。自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)、無差別(当事国が同じ権利を与え合う)、多角的通商体制(多国間で十分な自由化、レベルの高いルール策定を実現すること)を基本原則としている。

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