2020年の東京五輪・パラリンピック開催決定に続いて、2025年には、日本で大阪万博が開催されることが決定しました。
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日本・ロシア・アゼルバイジャンの3カ国が2025年万博の開催地に立候補
23日午後(日本時間24日未明)、フランスのパリにあるOECDカンファレンスセンターで開かれた博覧会国際事務局(BIE)の総会で2025年万博の開催地が決定しました。
万博開催国に立候補していたのは
・日本(大阪)
・ロシア(エカテリンブルク)
・アゼルバイジャン(バクー)
の3カ国です。
一筋縄では行かなかった万博誘致 政府・行政機関・財界が三位一体で協力
日本は何年もかけて政府、行政機関、財界が三位一体となって水面下の集票工作を繰り広げ、誘致活動を展開してきました。
具体的には、外務省などと連携して、アフリカや欧州の政府要人を高級料亭で会食や祝宴でもてなし、安倍晋三総理との会談を進めることで、票固めに尽力しています。
世耕弘成氏(経済産業大臣)、松井一郎氏(大阪府知事)、吉村洋文氏(大阪市長)、榊原定征氏(経団連名誉会長)、松本正義氏(関西経済連合会長)などが、貿易や投資、ODA(途上国援助)を通じて、日本との経済関係を強めることを条件に他国に支援してもらうといった戦略が取られていました。
関西経済連合会の幹部によると、「今年に入って地球8周分の距離を移動した」という話も出ています。
万博の誘致活動の実体は、他国への経済支援を絡めた神経戦だったようで、立候補したロシアとアゼルバイジャンも日本と同じような対策を講じていました。
今回の万博の投票方式には、BIE加盟国(170カ国)の各国代表が自席でボタンを押す無記名の電子投票の方式で、5分程度で結果が出るシステムが採用されています。
一次投票では日本85票・ロシア48票・アゼルバイジャン23票という順に得票数が多かったのですが、日本は3分の2の票数を取れなかったため、二次投票で決選投票が行われ、日本とロシアの一騎打ちは、日本92票、ロシア61票という結果によって、見事、日本が2025年の万博開催国に選ばれることになりました。
最終的には、過去の万博の開催実績や運営能力の高さを評価されたことが勝因となっています。
大阪万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」には最先端技術が集結
大阪万博は2025年5月3日~11月3日に開催される予定で、大阪市湾岸部の人工島「夢洲(ゆめしま)」が会場となります。大阪府と大阪市は、2024年に夢洲でカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業も目指しており、大阪市内の地下鉄延伸や橋梁の拡幅など湾岸エリアの再開発という観点からインフラ整備を加速させる起爆剤となるための方策されています。
万博が日本で行われるのは、2005年の愛知県「愛・地球博」(テーマ:自然の叡智)以来20年ぶりのことです。
大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、愛知万博を約600万人上回る2800万人の来場を見込んでいます。
「健康、医療に関する技術貢献」をメインテーマとしているだけでなく、「最先端技術の実験場」にするというコンセプトが掲げられており、人工知能(AI)・仮想現実(VR)・ロボットの技術革新をリアルに体験できることになりそうです。
大阪で万博が開催されるのは、1970年の吹田市「日本万博博覧会」以来50年ぶりとなります。
当時も大阪万博と呼ばれ、1970年3月15日~9月13日までの183日間、開催されました。
1964年の東京オリンピックが大盛況の内に幕を閉じた後、高度経済成長期の日本を国際的にアピールする大舞台として大阪万博が開かれたのですが、アジア初かつ日本初の国際博覧会として、当時史上最大の規模を誇り、
総入場者数:6,421万8,770人 (うち外国人 約170万人)
目標入場者数:3,000万人 (その後5,000万人に上方修正)
参加国数:77カ国
という大成功を収めました。
2020年の東京五輪後、日本の景気浮揚策に欠かせない2025年の大阪万博
大阪での万博開催は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の国際目標(SDGs)の達成に貢献できるとアピールしてきており、気候変動など地球的な課題を解決するというコンセプトが加盟国の支持につながった、とも言われています。
日本政府は、2025年に大阪万博が開催されると、その経済効果は全国で約2兆円に上ると試算しており、2020年の東京五輪・パラリンピック後の日本の景気浮揚策として位置付けられています。
まず、パリから帰国後の吉村洋文氏(大阪市長)は、会場となる大阪湾の人工島・夢洲の基盤整備に向けて、約140億円規模の補正予算案を開会中の市議会に提案すると表明しました。
大阪府は万博開催に向けた準備を進めるため、政府、経済界、地元自治体による新組織の構築を行う方針です。
さらに、菅義偉官房長官は、2025年に大阪万博が開催されることを大いに歓迎しており、「2020年の東京五輪後の一つの大きな目標ができた。東京と大阪を比べた時、大阪の地盤沈下が言われてきたが、大阪の活況に向けてものすごく大きなインパクトになる」と言及しています。
とはいえ、宇宙船が持ち帰った「月の石」や「動く歩道」が話題となった1970年の大阪万博開催当時と今現在とでは、社会の姿だけでなく国民の未来に対する考え方も大きく変わっています。
昨今の日本社会の傾向として、展示型のイベントは一般に集客力が低下しています。
大阪万博では、デジタルネイチャー及びミレミアル世代と呼ばれる若者のアイデアや創造性を積極的に取り入れ、未来の技術がもたらす新しい暮らしを国民が幅広く考える契機としていく必要があります。
大阪万博を取り巻く財政運営の難しさ 民間企業の協力度合いが鍵を握る
大阪万博を開催するに当たって課題が山積しています。1250億円と見込んでいる会場の建設・整備費は、国、大阪府、大阪市、民間企業で3分の1ずつ負担する予定ですが、民間企業による出資分を集める方法はまだ決まっていません。
交通インフラについても、大阪府と大阪市の財政が厳しいため、大判振る舞いはしにくい状況で、会場へのアクセスの整備が最大のネックとなっています。
今後、民間企業の資金や活力をどのように取り込んでいくかが重要な鍵を握っています。
開催までに7年という長い時間があるだけに、資金調達・企画運営・集客に向けた戦略という面で、無理なく計画的に万博への準備を進めていく姿勢が求められています。
関西経済にとって大阪万博とカジノIRは絶対に分けて考えられない両輪
大阪万博とカジノIRは両輪であり、二つで一つのセットの国策プロジェクトです。
その会場となる夢洲は、かつて1990年代の土地バブル崩壊で大赤字を抱え、2008年オリンピック誘致に失敗後、そのまま放置されたことで、大阪の負の遺産と言われ続けていました。
大阪万博とカジノIRのプロジェクトが国内外から有意義なものとして高く評価されれば、夢洲は、デート・観光スポットして有名なお台場のように魅力的な栄えたエリアとして見事に復活を遂げることになるでしょう。
そうすれば、東京一極集中のビジネス事情が変わり、関西経済が内需を牽引していく一大拠点となるはずです。
松井一郎氏(大阪府知事)も、「大阪、関西の状況を好転させることが、日本への貢献につながる」と力強く語っており、今後も政府、経済界、地元自治体の連携を図っていくことを表明しています。
(画像出典:EXPO2025、経済産業省、関西経済同友会、世耕弘成経済産業大臣ツイッター)