経済ゼミナール

8.ギリシャ財政と日本財政はリスク度が全く違う!




2010年代に入って、「ギリシャの財政問題」は大きく世界を揺るがすことになりました。EU加盟国のギリシャ危機で見えてきたのは、リーマンショックの後遺症が先進国にダイレクトに出てきたことです。

欧州(アメリカも脆弱な部分あり)の金融システムは薄氷の上を歩いている状況だし、不良債権の処理がきちんと進んでいるわけでもない。会計制度を変更して、含み損や赤字を見えにくくしているだけのよう。それが、ちょっとした傷口から大きな痛みが噴出しているのが現状です。

株価の暴落が発端となって、実体経済にさらなる悪影響を与えないか心配でなりません。日本政府は手をこまねいて「見てるだけ」「何もしない」という姿勢であってはいけないと思います。景気をさらに力強く回復させるために、あらゆる手段を行使しなければならないのです。

ギリシャ危機と日本の財政赤字問題

ところで、渦中のギリシャ危機を、日本の財政赤字問題と並行して議論する識者がいるけど、それはちょっと違うと思います。

ギリシャはEU加盟国が使っている「ユーロという通貨」を自由に発行する権利を持っていないから困っているのです。ドイツなど複数の他国に借金をしていて、それを期限までに返せないことで行き詰っているのです。

一方で、日本は他国に対して借金をそんなにしているわけではない。国債発行残高の6%くらいしか、海外に依存していないの。むしろ、対外債権と貿易黒字によって、国のバランスシート全体で見ればプラスになっています。

また、他国と通貨を共有しているわけでもなく、国の借金そのものが円建てなので、日銀が円をもっと刷ればいくらでもお金を供給することが可能なのです。

もし、日本がドルなどの海外通貨で借金をしていたら先行きは暗いかもしれないけど、実際はそうではありません。

だから、何となくの印象で物事を判断するのではなく、きちんと根拠を持って冷静に対処するべきなのです。

ヨーロッパで起こっている大変な事態

2018年の現時点でも欧州では色々と大変な事態が起こっています。

PIGS諸国(ギリシャ・スペイン・ポルトガル・イタリア)の財政危機、経済状況の悪化は、もうずっと指摘されていて、イタリアがユーロ離脱を言い出しかねない局面にまでなりました。

イタリアは地方自治体がデリバティブ(金融派生商品)で大損失を被った過去があって、その額は何と11億ユーロに達しています。

金融市場では、イタリア政治不安でイタリア国債が売られ、イタリア債の利回りが急上昇しているのです。

EU圏でドイツとフランスに次ぐ経済規模を持つイタリアの政権が反EUを唱えるとなると、EUが分裂・崩壊していくプロセスが始まりかねません。

イタリアはEU圏で「too big to fail」、つまり、大きすぎて潰せない国なのです。

それと同時に、「too big to bail」、つまり、大きすぎて救済できないというジレンマも抱えています。

イタリアは料理やファッション、ブランド品などで女性に人気があって有名だけど、大らかで優雅な雰囲気はどうなってしまうのでしょうか?

もはや、欧州全体に国家財政のリスク、もしくは景気減速の兆候が出ています。

ひょっとしたら、ヨーロッパの金融システムが崩壊に向かって真っ直ぐに突き進んでいるのかもしれません。

ただし、ドイツだけは貿易立国で、輸出が増えることで稼げる国なので、ユーロ安は非常に大きな追い風になりそうです。

それどころか、ドイツがEUを必死で支えている大黒柱になっているのです。

他の国のために、同盟国である自分の国が犠牲にならないといけない、という状態は非常に危なっかしい状態です。

トランプ大統領のように、自国ファースト、自国優先主義の風潮が出始めていると言えるでしょう。



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