経済ゼミナール

7.日本のデフレ問題を考える




日本のデフレ問題を考える

 

この20年間、日本の物価はほとんど上昇していないというデータがあるわ。その一方でアメリカは80%、イギリスは70%の物価上昇が起こるなど、先進国ではインフレ傾向が目立っていたの。

ということは、日本の経済状況は他国とはちょっと違う!?という前提に基づいて、話を進めていきたいと思うわ。

2009年11月に政府が『デフレ宣言』をしたけれども、日本のこのヤバイ状況はまだ続きそうね。というのも、働いている人の所得が増え、消費が伸びることによって、お金の流れが活性化し、物価が上昇していくのが当然だもの。

ある意味において、「緩やかなインフレ」になるというのは、日本経済が健康体である証拠だと思うわ。日本の物価が上昇しない最大の原因は、ズバリ「労働者の賃金が増えない」ことにあるはずよ。

1991年にバブル経済が崩壊した後、ずっとサラリーマンの平均年収は下がり続けているの。この現象は、2003年以降の「景気拡大期」にも変わっていないのよ。その理由は、「企業が従業員を大事にしなくなったから」だと考えているわ。特に大企業が、国際競争力を保つという名目で、『人件費と製造コスト』を抑えてきたことにあるの。

これでは、内需拡大なんて到底できっこないでしょうね。すると、「デフレの進行が止まらない」という結果に陥ってしまうわ。

確かに、小泉政権時代の2003年~2007年や安倍政権時代の2013年~2017年の間は業績がとても良くなって、【過去最高益】を出した日本企業がたくさんあったわ。この期間、多くの銘柄の株価は上昇し、REITを扱う不動産業は大いに栄えていたの。

しかし、2007年のサブプライム問題をきっかけに、世界経済が低迷期を迎え、『外需頼み』の日本の企業業績は目に見えて悪化してきたわ。また、消費税8%への増税で2014年には急激な景気の落ち込みが見られたわね。

 そしたら、非正規社員がさらに増加し、派遣社員の首切りが当然のように行われ、日本の雇用環境はますますひどくなってしまったの。今現在は、業績不振を理由に正規社員をリストラしたり、ボーナス減額するところが多くなっているわ。

こうなると、『将来に対する生活の不安』から、物を買ったり、サービスを受けたりするという消費行動が衰えてしまう。

もし政府が本気で「デフレ退治」を考えているならば、「雇用&所得条件の改善」に尽力すべきね!

2009年9月に発足した民主党政権は、外需依存の体質を脱却し、「内需主導」の日本経済を目指すことを掲げていたわ。というのも、「外需頼み」では、為替の影響を常に受け続けてしまうからなの。円高になれば輸出企業の業績は大きく悪化してしまう。

基本的には、輸出企業における業績の損益分岐点(黒字か赤字かの分かれ目)が1ドル=105~106円と言われているの。それが、民主党政権時代に95円になり、90円へと円高が進行してきたので、民間企業は「人件費と製造コスト」削減を中心とする努力によって円高を克服しようとしてきたわ。

ところが、1ドル=80円台に突入すると、ほとんどの大企業が音を上げて「なす術がない」状態になってしまったの。

これでは確かに「長期の不況」や「雇用の悪化」を食い止めることは出来ないわね。

ということは、「外需頼み」の割合が多い日本経済にとって、「為替を円安に持っていく」政策が一番効果的だと思うの。だって、円安になればなる程、輸出企業は自動的に利益が増えることになるからよ。その意味で、アベノミクス、特に黒田日銀総裁の異次元の金融緩和は大成功したと思っているわ。

それでも、自国の通貨が安い方が「メリットが大きい」ので、かなり長期間に渡って韓国、中国、アメリカなど多くの国々の間で「通貨安競争」が行われているわ。内需主導の経済回復ができない状況なので、実は日本も「通貨安競争」の中に入っている傾向があるの。

自国の通貨が安ければ、安い製品を海外でたくさん売ることができるから、輸出によって経済を潤すことができる。

中国が人民元の切り上げ(=元高)を嫌がっているのも、経済に占める製造業の割合が大きいので、安い製品を海外に売って大きな収益を得るというビジネスモデルが通用しなくなるからよ。

「貿易立国」で成り立っている国にとっては、「通貨安に導けるか」という課題はとても重要なの。



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