一般に、『通貨が安い方が有利』というのは、【貿易立国】で成り立っている国の話だと言ったけれども、もう少し具体的に分かりやすく説明してみるね。
「貿易立国」とは、自国内の企業で作った製品を海外に輸出し、それ現地を売って外貨を稼ぐことで収益を上げるというビジネス・モデルが主流だわ。
例えば、為替が1ドル=100円の時に、日本企業が輸出で得る収益が100億円だと仮定すると、為替が1ドル=80円の円高になってしまうと、収益は80億円に減ってしまうのね。つまり、為替が円高になるというだけで、20%も損失が出てしまう計算になるの。
だから、「貿易立国」(輸出をメインとする企業)にとっては、「通貨高」こそが命取りになってしまうのね。それは、株価が暴落する要因にもなってしまう。
実は、「円高の方が望ましい」という意見と、「円安の方が望ましい」というう正反対の意見の両方があるの。
一体、どっちが本当に良いのだと思う??
結論から言うと、長期的には「円高の方がメリットが大きい」という考え方が支持される場合が多いわわ。なぜなら、円高になれば、個人の「消費力」や企業の「購買力」が自然に向上することになるからよ。
為替が1ドル=100円の時に、1バレル=70ドルで取引されている原油が、1ドル=80円になったとすると、日本が原油を輸入する際にどちらがお得だと思う?
輸出の場合は円安が有利なのだけれども、輸入の場合は円高の方が有利になるの。
この原油の例だと、70ドル:100円=α:80円という数式によって、円高の場合、原油が一体どのくらいの価値になるか計算できるわ。
ええっと、(内側同士と外側同士の数字をかけて)、100α=5600だからα=56になるか。。。
ということは、1バレル=70ドルのレートの場合に比べて、1バレル=56ドルの価値で日本は原油を購入することができる。
つまり、この事例の円高では、海外の物資を20%も安く買うことが可能になるの。
これは、内需拡大(国内産業の発展と成長)を目指した場合の円高によるメリットを踏まえると、適切な見解になってくるの。
「消費力・購買力」が高まることで、日本経済は活性化するという着眼点よ。
ところが、ここで無視する訳にはいかないここで重要なポイントが一つあるの。数字という定量的な価値基準だけではなく、目に見えない部分、定性的な価値基準についても考慮することが必要よ。ということで、「日本人の気質と経済の関係」についても触れておくわ。
また、前提条件として言及しておかなければいけないことがあるの。アベノミクスで円安になったと感じている人も多いし、金融緩和で円の価値が下がる方向に持っていったのは事実だわ。しかし、現在の1ドル=108円くらいだと、まだまだ円高基調なのよ。2007年7月、2014年12月には1ドル=120円を付けていたの。
確かに、円高だと「消費力・購買力」が高まるので、海外の製品やサービスを安く手に入れることが可能よね。
例えば、ハワイやバリ島に旅行に行ったとしましょう。以前なら、10万円以上していたツアー代金が、今や5~7万円くらいにまで安くなっているわ。もちろん、色んな企業側の努力もあるのでしょうけど、「円高によるメリット」の大きさが象徴されている事例だと思うの。
あるいは、フランスの高級ブランド品であるシャネルやルイヴィトンの鞄を安く購入できるとか。。。
もちろん、日常生活で毎日買うようなものも、円高の影響で安くなっていると言えるわ。
こういう角度から見ると、ほぼ全ての日本人が「円高のメリット」を享受しているの。
ところが一方では、「円高=デフレ」という風に、円高は物価の下落を招く元凶として扱われる場合が多いのね。
商品を購入する側としては、「円高=安い=お得」という連想が浮かぶのだけれども、商品を作る側としては、「円高=利益が伸びない=景気が低迷する」という悪いイメージが付いてしまっているわ。
おそらく、円高を有効活用する道もたくさんあるんでしょうけど、「景気を冷え込ませるネガティブな印象」が、日本人にとって拭い切れないのでしょうね。
でも、日本の家計が保有する資産の総額は1800兆円と言われ、世界最大なのよ。ということは、地道に稼いで利益を伸ばす方法を考えるよりも、まずは個人消費を伸ばし、お金の流れを円滑にする方法から考えた方が効果的だと思うの。
ただし、ここに幾つかの障壁が立ちはだかっているわ。その一つは日本が誇る「金融資産の約70%」を、「60歳以上の世帯」が保有していることなの。
日本人の4~5人に一人が65歳以上になっているのに、この視点を度外視して経済を語るわけにはいかないはず。少子高齢化時代においては、働いて賃金を得ることだけでなくて、莫大な預貯金をどうやって有効活用するか、という斬新なアイディアが求められていると思うの。
それから、貯蓄額が他国に比べて非常に多い、ということは、それだけ大きなリスクを取ってお金を使おうとしない国民性だということなの。これはいわゆる「気質の問題」なので、日本人の「心理的な傾向」について考察する必要があるわね。
では、日本の誇る世界最大の個人金融資産をどうやって動かせば良いのでしょう?結論だけ書くと、非常に簡単よ。私が思いつく範囲でいくつかポイントを挙げてみるわね。
箇条書きで申し訳ないんだけど・・・。次のような事実を認識しておくことが大切だと感じているわ。
- 日本人が自発的、能動的にお金を使って消費したいという気持ちになること。
- 日本全体に巣くっている不穏なムード、雰囲気、感情を癒していくこと。
- 日本の財政不安を煽っている「マスコミの情報」が本当なのかを真剣に検証する必要があること。
- 60歳以上の世帯がお金をいつまでも溜め込まずに、安心して使えるモチベーションを高めるためこと。
そして、ここからは、政府がしっかりと認識しておくべき内容、あるいは実行に移すべき内容よ。
- 「医療・福祉・年金の制度」が今後も安全できることを政府が具体的に証明してみせること。
- 90年代前半に背負ってしまった不動産や株式のバブル崩壊の「心理的なトラウマ」を解消し、特に新興企業やイノベーションを推進する人々が保有する資産の価値が向上する対策を打つこと。
- リスクを恐れて預金していても、企業や個人への貸出先が減っている銀行は、「国債を買って運用」する以外、あまり他に選択肢がないという現実の打開策を打ち出すこと。
- それは結局、「銀行預金=国債購入」という形で、財政赤字の補填にお金が流れているに過ぎないことを理解すること。
- 緊縮財政を行っても、需要が低迷し、景気が悪化するだけで、国債の発行額がどんどんえ続ける要因になること。
- 日本銀行が現在行っている金融緩和を続行し、「紙幣の増刷」によってお金の供給量を潤沢にする政策を維持すること。
- 【紙幣の増刷】によって〈インフレ状態〉が続けば、『貯蓄や預金をしていても、お金の価値は下がる一方』なので、現物の製品やサービスを消費したいという欲求が出てくること。
- 財政赤字が膨大な量に増えていても、年率3~5%の健全で「適度なインフレ」が起これば、それは長い時間をかけることで自動的に解決する見込みがあること。
- 財政赤字が問題にならないとすれば、政府は「積極的な財政出動」を通じて、景気対策を惜しみなく打つことができる可能性があること。
- その結果、国内の需要が回復し、新たな産業が育つ土壌がもたらされ、安定した雇用が生まれる余地ができること。
- 若い人達が明るい希望を持って仕事に携わる環境が整うことで、結婚し、子供を育てる意欲が高まること。
- 経済の活性化によって、国の税収が自然に伸びていき、社会保障制度をより充実させる余裕が生まれること。
- そうしたら、子供も、若い人達も、高齢者も皆、豊かで幸せな生活を営むことができるはず。
このくらいかな、今の私が提言できることは・・・。また、何かあったらどんどん意見を述べてみるわね。