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自然災害・環境問題

ホタテ貝殻・木材・サトウキビを使ったプラスチック代替商品が登場!(オイルマネーからエコマネーの時代へ)




プラスチックごみによる海洋汚染に国際的な関心が集まっています。

レジ袋や発泡スチロール製食器など、海洋汚染を引き起こす原因となる使い捨てプラスチック製品の生産を禁止したり、使用時に課金したりする規制を導入済みの国や地域が、少なくとも67に上るとの調査結果が出ています。(※国連環境計画(UNEP)による集計)

EUなど世界各国ではプラスチック製品の規制やリサイクルが加速している

欧州連合(EU)は、プラスチック製の綿棒、皿、ストロー、フォーク、スプーン、風船の持ち手などの使い捨て製品の禁止と、2025年までにプラスチックボトルの9割回収を目指しています。

欧州連合(EU)では、加盟国に対して次のような提案を行っています。

1.代替製品の販売促進や無料提供の禁止を通じて、プラスチック製品の使用を削減していく。

2.民間企業には、廃棄物処理費用の一部負担が求められる一方で、より環境負荷の低いプラスチック代替製品を開発することへのインセンティブを付与する。

3 2025年までに使い捨てペットボトルの9割回収を義務付けする。その手法として、預託金を販売価格に上乗せし、ボトル回収後に返金する「デポジット制度」を導入する。

とは言え、こうした議題は、今後、EU加盟28か国と欧州議会の承認を得る必要があります。

(※インセンティブとは、やる気、意欲を引き出し、目標を達成させるための動機付けを与えること。営利活動の場合、報酬やボーナスなどの経済的利益に反映される。)

生態系の維持に重要な役割となっている食物連鎖に入り込み始めているプラスチック廃棄物を環境から除去することは、差し迫った緊急の課題なのです。

これらの時代には、地球環境を保護し、人類が存続できる条件を整えるという観点からも、サステイナブル(持続可能)な素材の使用が求められています。

日本ではまだ国家レベルで使い捨てプラスチック製品を禁止したり課金したりする規制はなく、プラスチックごみ削減の数値目標もないため、取り組みの遅れが鮮明になっています。

プラスチックごみの総排出量は中国が最多ですが、1人当たりの排出量では日本が2番目に多いという事実があります。

ゆき
ゆき
うむむ~、何とかプラスチックごみについて、日本人の意識を高めることはできないかしら?
 プラスチック汚染を食い止めるためには、個人と企業と政府が力を合わせて取り組まないといけない。って話をしたよね。
さなだ
さなだ
ゆき
ゆき
 うん、まずはできることから日々の暮らしの中で取り組んでいこうと思っているわ。そうしたら、地球環境に深刻な被害を及ぼしている海洋汚染を止めることができるかもしれない。
 そんな話をして入る最中、2018年12月に入って、急速に事態が動き始めているんだ。
さなだ
さなだ
ゆき
ゆき
 ええっ~!!そうなの!?ぜひぜひ知りたいわ。

バイオマスの新素材でプラスチック代替製品の開発を目指す明康株式会社

まず、東北地方にある民間企業では、ホタテ貝殻を使った割り箸によってプラスチック代替製品の開発を行っています。

ホタテ貝殻を原料にした新素材を開発したのは、明康株式会社(宮城県塩釜市)で、大きな注目を集めています。

これは、世界でも珍しいバイオマスプラスチックの新素材で、開発した近江明男社長は「世界中のプラスチックを代替したい」と意気込んでいます。

ホタテ貝殻に着目したのは2010年頃のことでした。

青森県在住の知り合いから、「一時保管場所に大量に廃棄されたホタテ貝殻の処理に困っている」と聞いて、津軽半島にある現地へ行ってみると、見渡す限り貝殻の山が積まれています。

「このままではいけない」と近江社長は危機感を覚え、廃棄物となったホタテ貝殻を一日でも早く処理するべく、バイオマスプラスチックの開発に挑んだのです。

以前のバイオマスプラスチックは、トウモロコシや木材などを用いたものが多く、有機資源含有量は30%が限界でした。

 欧州連合(EU)では、有機資源50%以上のプラスチック代替製品を目標としているんだよ。
さなだ
さなだ
ゆき
ゆき
 これまで有機資源(狭義ではバイオマス資源のこと)が30%までしか代替製品では作れなかったのに、今後は50%以上とは、随分とハードルが厳しいわね。
 それだけ、廃棄物の処理に困っていて、リサイクルする必要があるってことだよ。念のため、バイオマス資源の種類について類型化しておきます。
さなだ
さなだ

バイオマスとは動植物から生まれた再生可能な有機性資源

廃棄物系バイオマス
畜産資源(家畜排せつ物)
食品資源(加工品残さ・生ごみ・動植物性残さ)
農業資源(パルプ廃液)
林産資源(製剤工場残材・建築廃材)
下水汚泥

未利用バイオマス
林産資源(林地残材)
農産資源(稲わら・もみがら・麦わら)

資源作物
糖質資源(さとうきび・てんさい)
デンプン資源(米・いも類・トウモロコシ)
油脂資源(なたね・大豆・落花生)

ゆき
ゆき
 いや~、たくさんの種類があるわね。全てを有効利用できたら良いな。
 確かにそうだね。ところが、採算性とか効率性とかの問題もあり、とにかく一点集中してでも形を作ることの方が今は先決なんだ。
さなだ
さなだ

ホタテ貝殻を51%以上の含有率となる新素材で脱プラスチックを目指す

その後、近江社長は、試行錯誤と資金繰りや機会設備などの色んな苦労を重ねた約5年後に、ようやくホタテ貝殻を51%以上の含有率となる新素材(ポリプロピレン樹脂を混合)の技術を発見し、原料化に成功することができました。

この新素材は、洗えば何度でも利用できますし、可燃ごみで捨てることが可能です。

近江社長がプラスチック代替製品としてホタテ貝殻の割り箸を作ろうと考えたのは、国内に流通している割り箸の多くが中国産で、その仕入れ・流通経路も不透明なことから、安全性に疑念を抱いていたからです。

中国産の割り箸を国産の代替品に変えたいもう一つの要因としては、

1.漂白剤やかび防止剤が残留する可能性

2.視覚障害者の方から「ささくれができない割り箸があれば」という要望

があったからです。

そこで、近江社長は、長期保存ができるだけでなく、直角に割れる「ホタテ割り箸」を2016年から販売開始しました。

ホタテ貝殻割り箸

(出典:明康株式会社)

東日本大震災の津波で大きな被害を受けた東松島市の工業団地で新たな工場建設を始めており、地域住民を従業員として雇用し、2019年からの稼働を予定しています。

近江社長は、「被災した東松島市を元気づけられるよう、ホタテ割り箸を世界に発信したい」と意気込んでいます。

現在、ホタテ割り箸は、10本入り(価格は128円より)で東松島市内の飲食店や土産物店で販売されています。これからは、弁当箱・フォーク・スプーンなどの開発も進めていく予定です。

明康株式会社は、「東京オリンピック・パラリンピックで使って頂ければ国際アピールになる」という意気込みで取り組んでいます。

 ホタテ割り箸は順調に販売が進んでいるけど、それ以外にも脱プラスチックの製品はあるんだよ。
さなだ
さなだ
ゆき
ゆき
 それは心強いわね。一体どんなものなのかしら?
 海洋汚染が問題視され、その原因の一つである、プラスチック製ストローの代替品を開発している企業があるんだ。
さなだ
さなだ

アキュラホーム株式会社が間伐材を利用して木製ストローの量産化に成功

間伐材を利用することで、木製ストローの量産化に成功した企業があります。それはアキュラホーム株式会社(東京都新宿区)という木造注文住宅メーカーです。

(※間伐材とは、森林の成長過程で密集化する立木を間引く間伐の過程で発生する木材のこと。)

この企業では、木造建築の技術を活かして、環境に優しい木製の普及を目指しています。

間伐は、森林の育成にはどうしても必要だが、間引いた後の木材の有効活用が大きなテーマとなっていました。

アキュラホーム株式会社は、「環境保護に貢献するだけでなく、日本のスギやヒノキを使うことで、訪日外国人客らに和風テイストをアピールできるのでは」と期待を寄せています。

そうした思いの中、カンナで削った木片をヒントに、間伐材を厚さ約0.15ミリにスライスし、管状に巻き上げた木製ストローを完成することができました。

何と、世界で初めて木製ストローを量産することにも成功しているのです。

その製品を2019年から「ザ・キャピトルホテル東急」(東京都千代田区)に納入する予定です。

プラスチック製ストローの代替としては紙製も注目されています。しかし、紙製だと飲み物の中でふやけやすいという弱点があります。

それに対して、木製は液体に長時間つけてもふやけることはなく、紙製よりも温かみがあるという長所があります。

ただし、まだ大きな課題も残されています。

それは、量産コストの問題です。

プラスチック製ストロー 1本当たり0.5円

紙製ストロー 1本当たり数円

ですが、木製は現段階で数十円かかってしまいます。

ゆき
ゆき
 う~ん、良い製品だと確信しているけど、一体どうすれば良いんだろう?
 木製ストローの普及が進んでいけば、コストダウンを段階的に行うことは可能だよ。アキュラホームさんは、そうなると見込んで製造販売しています。
さなだ
さなだ
ゆき
ゆき
 なるほど!早く広まってくれれば嬉しいな☆

木製ストローの材料には、全国の森林で大量に発生する間伐材を利用しますが、まずは西日本豪雨の被災地の間伐材を優先して使っていく方針です。

台湾・カナダでもタピオカミルクティーで脱プラスチックの動きが広がる

台湾にはテイクアウトのタピオカミルクティー専門店が約16000店舗も存在しています。

年間の売り上げベースでは約3040億円と台湾経済の一角を担っている程、規模が大きいのです。

タピオカミルクティーは、日本のコーヒーカフェと違い、店内で飲むというよりも、飲み歩きのが習慣が根強くあります。

そのため、ストローをお店から提供してもらわなければ、飲みこぼすことが目に見えています。

タピオカを吸い上げるには、独特の太い専用ストローが必要だからです。

ところが、台湾政府が、プラスチック製ストローの提供を禁止する法案を検討し始めたのです。

これは、台湾の蔡英文(さいえいぶん)政権が、廃プラスチック対策で2030年までにプラスチック製のストローなどを全面禁止にするという先進的な目標を発表したことの一環でもあります。

そこで、消費者からは、「どうやってタピオカミルクティーを飲めばいいのか分からない」という不満の声が続出しました。

それに対して、環境保護署の担当者が、「スプーンで食べればいい」との発言をしたのですが、消費者からは大きな反発を招く結果となりました。

台湾はペットボトル回収率で世界トップレベルの実績があります。

廃プラスチック対策における目標達成にも本気で取り組んでいくことでしょう。

台湾特産のサトウキビを使ったストローがカナダ州議会や大学で注目される

プラスチック規制と同時に、代替プラスチック商品の開発にも取り組んでおり、台湾特産のサトウキビを使ったストローが登場しています。

日本でも大流行のタピオカミルクティーですが、本場の台湾では、サトウキビのストローを使ってタピオカミルクティーを飲む動きが広がりつつあります。

こうしたトレンドは、台湾だけでなく、カナダにも派生し始めています。

台湾で開発・製造されたサトウキビを使ったストローが、何とカナダでも広がりつつあるのです。

台湾からカナダに移民した業者が推進に力を入れており、ストローの開発を手掛けた台湾先盟という企業のカナダ子会社に、サトウキビ・ストローの採用申請がある他、大学のキャンパス内でも使用したいという要望が出ています。

バンクーバーでは2019年6月からプラスチック製ストローの使用が禁止となります。

サトウキビを使ったストローは、2018年10月に大量生産が成功したばかりで、第一陣の10万本がバンクーバーに到着しました。

サトウキビ由来のストローには次のような利点があります。

1.紙製のストローより丈夫。

2.完全に自然分解される。

カナダのブリティッシュコロンビア州の議員は、コスト削減や環境保護のためにも、台湾先盟社のストローを推進するべきとの考えを州議会で表明し、製造工場の設置を州は支援するべきだと訴えました。

台湾製のサトウキビ・ストローがカナダで広がることになれば、環境意識の高い他の国々にも大きな影響を与えることになりそうです。



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