経済制裁

コラム

北朝鮮の金正恩委員長は制裁違反のベンツに平然と乗車!資金獲得は仮想通貨ハッキングや違法貿易と判明!




3月12日、国連の北朝鮮制裁委員会専門家パネルは年次報告書を公開しました。

制裁を強化する度に、外貨獲得の手口を巧妙化させている北朝鮮

そこで明らかになったのは、厳しい制裁圧力にも関わらず、

1.北朝鮮産の石炭や鉄を偽装して、ホルムスク港を拠点にロシア経由で韓国に密輸出

2.パナマなどの船籍を通じて船から船に石油製品などの積み荷を移し替える「瀬取り」を行う

3.北朝鮮が日本の仮想通貨交換業者に対してサイバー攻撃を繰り返し実施

といった方法で、違法に資金や資源を獲得してきたことです。

制裁委員会専門家パネルの調査では、2018年8月以降も、北朝鮮が石炭を密輸した疑いが持たれています。

制裁を無視し、ロシア・中国・ベトナム・韓国が北朝鮮の密輸出を手助け

北朝鮮からの輸出先は23件もあり、

ロシア(7件)・中国(5件)・ベトナム(9件)・韓国(2件)

となっています。

つまり、ロシア・中国・ベトナム・韓国は北朝鮮の経済を支える味方の役割を担っているのです。

しかも、そのやり口は実に狡猾です。

1.ロシアなど第三国の港に北朝鮮産の石炭を輸送し、港でいったん荷降ろしする

2.書類上で産地を偽装した後、別の船が同じ港に入港して石炭を積み替える

3.その石炭を各国に輸出する

といった具合です。

専門化パネルの報告書によると、「いくつかの船は、石炭が積み降ろされた港に数日後に入港し、出港時には、重量が増えていた」と不自然さを指摘しています。

ロシア極東サハリン州南部にあるホルムスク港が北朝鮮の密輸出の拠点となっており、2018年8月~10月にかけて、少なくとも北朝鮮船籍3隻とトーゴ船籍1隻が、7回に渡って北朝鮮産の石炭を輸送しました。

これらの4隻は、北朝鮮の元山や南浦、清津の港から出航しています。

3月12日、アメリカは、国連安全保障理事会が決定した「北朝鮮への制裁」を逃れるよう支援した

1.中国の海運企業2社を制裁対象に新たな加える

2.北朝鮮と「瀬取り」と呼ばれる違法な洋上取引をしている船舶のリストを公表する

ことで、制裁網を一段と強化し、非核化交渉の主導権を握りたい構えです。

アメリカの財務省は、

中国の大連に拠点を置く中国企業が北朝鮮の情報機関、朝鮮人民軍総参謀部偵察局傘下の企業物資やサービスを提供していた

ことを突き止めました。

アメリカのムニューシン財務長官は、「北朝鮮との違法な取引を隠そうとしている海運会社は大きなリスクにさらされることを明確にする」と語っています。

さらに、アメリカの財務省や国務省は、

1.瀬取りに関わったと疑われる18隻、

2.北朝鮮産の石炭を輸出したとみられる49隻の船舶のリスト

も公表しました。

船籍は北朝鮮だけではありません。

(下記の記事にその理由を述べておきました。ぜひ読んでください。)

パナマの船籍で船から船に積荷を移し替え、他国と貿易を続ける北朝鮮

日本の外航海運会社が運行する船は、日本籍が9.1%で、船籍の61.3%をパナマに置いています。

つまり、自国よりもパナマの方が多いのです。

世界的な海運の動きを見ても、17.7%の船舶がパナマ籍と最も多いのが現状です。

船にも人間と同じように国籍があり、登録した国の法律によって保護を受けられます。

その内容は国ごとに異なるため、より有利な条件を持つ国に船籍を移す動きが普及しているのです。

このように、ある国の会社が船籍を他国に置くことを「便宜置籍」と言いますが、そうするには交易上のメリットがあるからです。

その具体的な内容は、

1.船舶登録が容易かつ安価に行える

2.船主となる会社をその国に設立し、その管理や解散が容易に行える

3.外国人船員の配乗も容易である

といったことが挙げられます。

こうした動きは、1971年のニクソン・ショック以降から始まっています。

ニクソン・ショックとは、ニクソン大統領が金とドルの交換停止を発表した出来事です。

その後、為替は固定相場制から変動相場制に移り、円の価値はドルに対して大きく上昇しました。

そのため、日本としては、国際競争力確保のために円をドルに移行する動きが活発になったのです。

先進諸国の船員は賃金が高く、低賃金の発展途上国の海運と価格競争をするのは不利です。

そこで、パナマなどの国籍要件の規制が緩やかで、賃金の安い外国人船員を乗せられる「便宜置籍」を行っています。

また、国際決済通貨であるドルに自国通貨を交換することで、為替上のリスクを軽減することが出来ます。

こうした事情から、世界の船舶は

第1位 パナマ(17.7%)・北アメリカと南アメリカの境に位置

第2位 リベリア(11.1%)・西アフリカ

第3位 マーシャル諸島共和国籍(10.6%)・オセアニア

に船籍を置いています。

そこで、北朝鮮は、元々はどの国の船籍なのか分かりにくいパナマに着目し、船から船に積み荷を移し替え、他国と貿易をして外貨を獲得し、制裁逃れを行っているのです。

北朝鮮が、国家という枠組みを超えて自由に行き来できる仕組みを最大限に利用しているのは、船舶に限ったことではありません。

日本の仮想通貨取引所は北朝鮮がサイバー攻撃で資金を盗み取る格好の餌食

もう一つが仮想通貨(暗号資産)なのです。

仮想通貨には、次のような問題点があります。

1.闇市場を生みやすい

2.脱税の逃げ道になる。

3.資金洗浄に利用される

4.仮想通貨と法定通貨とを交換する取引所の管理体制が甘い

確かに、投資家保護、資金洗浄と脱税の防止を目的に、国家や業界団体が規制を及ぼす動きも進んでいますが、サイバー攻撃に耐え得るためには、強い防御システムと内部人材の高い倫理意識が必要であり、そのためには多大な費用がかかります。

国連の北朝鮮制裁委員会専門家パネルは、北朝鮮が仮想通貨交換業者に対してサイバー攻撃を実施し、外貨を獲得している実態を明らかにしました。

仮想通貨交換業者へのサイバー攻撃を通じて、北朝鮮が盗み出した仮想通貨の総額は、5億7100万ドル(約630億円)以上とされています。

2017年1月~2018年9月までにアジア諸国の「仮想通貨市場」に少なくとも5回のサイバー攻撃を行っているのですが、北朝鮮によって盗み出された仮想通貨の9割以上は2018年1月のコインチェック事件によるものです。(コインチェックの被害総額は時価5億3400万ドル)

仮想通貨取引所であるコインチェックにおけるNEM不正流出に北朝鮮のサイバー攻撃が関与していると明確に国連が発表したのです。

その根拠は、ロシアのITセキュリティ会社Group-IBが2018年10月に報告した調査資料が元となっています。

調査資料では、北朝鮮には「Lazarus」(ラザルス)というサイバー犯罪組織が存在、コインチェックを攻撃したとしています。

また、2018年9月の仮想通貨取引所「Zaif」の不正流出についても北朝鮮の関与が疑われていますが、まだ犯行グループは分かっていません。

北朝鮮のサイバー犯罪組織「Lazarus」の犯行は、ロシアのITセキュリティ会社Group-IBだけでなく、世界的なセキュリティ会社のマカフィーも、Bitcoinを盗み出すフィッシング攻撃「HaoBao」を行っていると2018年7月に脅威レポートの中で警告しています。

日本人は北朝鮮の悪態に関心を持ち、解決に向けた積極的な取り組みを!

2017年に脚光を浴びた仮想通貨バブルで、若者を中心に多くの日本人が巨額の利益を手に入れました。

しかし、2018年1月のコインチェック事件で仮想通貨バブルが崩壊し、多くの日本人が巨額の損失を被りました。

その痛手は現在も続いており、仮想通貨市場は低迷を続け、仮想通貨取引所は閑散相場となっています。

すなわち、北朝鮮への経済制裁と、それに対抗する形での外貨獲得の動きは、違法あるいは不当なものであり、その被害を日本人が直接的あるいは間接的にまともに食らったという事実を認識しなければなりません。

日本人の資産が北朝鮮に約600億円も奪われてしまったのです。

そして、その奪われた資金は、十中八九、核兵器やICBM(長距離弾道ミサイル)の開発に使われています。

だからこそ、もっと北朝鮮に対して関心を持ち、もっと北朝鮮に対して怒りの感情と不信感を持つべきです。

日本には「信用力・安全性」というブランド力・付加価値があるため、5Gの分野で後れを取っている分、サイバーセキュリティーの分野で世界標準規格を目指す技術とノウハウを確立して欲しいと考えています。

北朝鮮が信頼できない、信用するに値しないのは明白です。

北朝鮮は、国策として違法貿易を行い、サイバー攻撃を繰り返してきたのです。

2019年2月27日~28日にかけて行われた米朝首脳会談で、アメリカのトランプ大統領は英断を下しました。

「速く」よりも「正しい」ことを優先したのです。

アメリカには北朝鮮に対して適切な対応を取ってもらい、この国の指導者、幹部が失脚するか、非核化を受け入れるまで徹底的に追い込むべきです。

北朝鮮は核と弾道ミサイルを首脳会談前から手放す意図は全くなかった!

国連の北朝鮮制裁委員会専門家パネルは、核と弾道ミサイルの開発計画は現状のまま継続しており、問題は解決していないと断定しています。

つまり、北朝鮮に制裁を加えても、彼らは悪徳な手法を用いて外貨を稼ぎ、核と弾道ミサイルを手放すつもりは全くないのです。

3月13日、韓国国防省は、北朝鮮北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場での復旧について「外形的な施設復旧はほぼ完了したと把握されている」と明らかにしました。

さらに!、

3月15日、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は、2月に行われた米朝首脳会談について、

1.アメリカは絶好の機会を逃した

2.いかなる合意にも至らなかったという失敗に深く失望している

3.アメリカが立場を変えない限り、北朝鮮は妥協したり対話を継続する意思はない

とした上で、

ミサイル発射や核実験の一時停止を続けるのかどうかは、金正恩党委員長が近く決める

と述べました。

その一方で「アメリカと北朝鮮の2人の最高指導者(トランプ大統領と金正恩党委員長)の関係は依然として良い」と、ちぐはぐな表現をしています。

再び、核実験やミサイル発射を日本近海で行うのでしょうか?

これについて、韓国の国防部は、

1.東倉里ミサイル基地は機能的な復旧は確認されていない

2.仮に機能的に復旧したとしても、ミサイルを発射するには相当な事前準備が必要

と報告しています。

朝鮮半島・軍事境界線近くの南北連絡事務所で北朝鮮側が人員を撤収

3月22日、韓国統一省は開城にある南北連絡事務所から、北朝鮮が撤収したことを公表しました。

2月28日、29日に行われたハノイでの米朝首脳会談で具体的な成果がなかったことから、北朝鮮が韓国に圧力をかけて、北朝鮮にとって事態を有利に進めようとする試みているようです。

2018年4月、南北連絡事務所は、文在寅大統領と金正恩委員長による南北首脳会談(板門店で開催)で設置が合意されました。

その後、開城工業団地内に2018年9月に南北連絡事務所が開所され、南北の当局者が常駐し、南北それぞれの次官級が務める所長が週1回、定例会議を行っていました。

これまで、「24時間、365日の意思疎通ができるようなった」と韓国側は評価していた。

今後の日本の株式市場にも多大な影響を及ぼす可能性が高まっている

3月15日の日本における株式市場の動きは、日経平均は上昇したものの、新興市場では北朝鮮の動きを嫌気した売りが多く出ていました。

また、防衛関連銘柄の石川製作所・ 豊和工業・細谷火工・重松製作所などが再び急騰しています。

金正恩党委員長の今後の発言次第では、為替を含めて金融市場に大きな影響を与えることになりそうです。



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