株式投資では、基本的に特定口座を開設することをお勧めします。
株式投資には、証券会社が税金を源泉徴収してくれる仕組みがあるので、「特定口座・源泉徴収あり」を開設すれば、税金に疎い人も確定申告をする必要なしに手軽に売買できます。
(住民税の申告も不要です!)
目次
株式による利益は確定申告によって節税できて税金が安くなる場合がある
しかし、確定申告をすることで節税できて税金が安くなる場合もあります。
その対象者としては、
1.株式の売買で1年間を通じて損失が利益を上回った人
2.株式で得た利益が配当金だけだった人
が当てはまります。
特定口座を開設すれば、1年分の取引をまとめた年間取引報告書が翌年1月末までに交付されます。
(証券会社にログインして自分でダウンロード、もしくは証券会社に郵送してもらえるよう選べる)
それを基に確定申告をすれば、1年間の上場株式等取引の詳細を計算する手間が省けます。
節税の方法を知らないと、本来の税金よりも、多く税金を払うことになってしまう可能性があるので、大事な資産を守るため、税金についてしっかり学んでおきましょう。
株式の取引にかかる税金の手続きは特定口座・源泉徴収ありを選ぼう
株式の取引の場合は次のように税金がかかります。
1.株式を売って得られた値上がり益にかかる譲渡益課税
2.企業から受け取る配当金にかかる配当課税
譲渡益課税と配当課税のどちらも税率は20.315%です。
その内訳は、15.315%(所得税)+5%(住民税)=20.315%となっています。
(※所得税の中に復興特別税0.315%を含みます)
ただし、証券会社に口座申し込みをする時、特定口座・源泉徴収ありを選ぶことで、株式投資で利益が出た場合であっても、証券会社が税金を源泉徴収してくれる仕組みになっています。
この場合、確定申告の必要がなくなります。つまり、税金のことを一切考えなくて済むのです。
ただし、次の条件に当てはまる場合は注意が必要です。
株式投資の取引で確定申告が必要な人
給与所得者(会社員)・フリーランス・個人事業主で株主による利益が20万円を超える場合
会社員で株主優待による所得による1年間の合計金額が20万円を超える場合、確定申告の義務があります。
そのため、株式の売買利益(=譲渡所得)が20万円以下なら基本的に確定申告は必要ありません。
(住民税は申告の必要があり)
もっと厳密に言うと、
株式の売買利益(=譲渡所得)+給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合
に所得税に関する確定申告の義務が発生します。
株主優待は、雑所得として課税対象になるので、税率は所得金額に応じて変わります。
証券会社で「一般口座」あるいは「源泉徴収なしの特定口座」を使っている場合
この口座を持っている人は、必ず確定申告をする必要があります。
株式投資の取引で確定申告が必要ない人
証券会社で「NISA口座」だけ、あるいは「源泉徴収ありの特定口座」を使っている場合
このケースでは、基本的に確定申告の必要はありません。
NISA口座だけを使っている場合は非課税なので、確定申告も納税も完全に不要です。
給与所得者(会社員)で給与所得が年間2000万円以下の場合
一つの会社から2000万円以下の給与所得を得ている会社員で、給与所得以外の1年間における所得の合計(株式投資の取引による利益)が20万円以下の場合、確定申告の義務はありません。
(住民税は申告の必要があり)
※退職所得は20万円から除外します。
年金を受給して生活している人の場合
年金による収入が年間400万円以下で、所得の合計(株式の取引による利益)が20万円以下であれば確定申告の義務はありません。
(住民税は申告の必要があり)
株式の配当金は、3つの税金の納め方がある メリットのある方法を選ぼう
配当金を受け取る際には、すでに配当金の15.315%(所得税)+5%(住民税)=20.315%が税金として差し引かれています。
例えば、10万円の配当が出ていたら、そのうちの2万315円が税金で引かれているのです。
こうした税金の支払い負担を軽くするための措置が配当控除となります。
株式の配当金の納税方法で、特定口座・源泉徴収ありを選んだ場合
株式の配当金は、特定口座で源泉徴収ありを選べば、配当金に対して税金の20.315%が源泉徴収で自動的に納付されます。
特定口座で源泉徴収ありの口座を開設している人は、確定申告をする義務がありません。
しかし、株式の配当金を確定申告をすることで、大きなメリットが発生します。
それは、
1.配当控除の適用を受けられる
2.株式や投資信託の損失と損益通算ができる
というメリットです。
ただし、注意すべきは、配当控除か損益通算のどちらか1つのみ選べるということです。
以下でその違いについて詳しく見てみましょう。
株式の配当金の納税方法で、総合課税として確定申告することを選んだ場合【節税テクニック】
総合課税を選ぶことで、配当控除の適用(=会社員や個人事業主の場合より税率が安くなる)を受けることができます。
配当控除とは、国内株式等の配当について、総合課税を選択して確定申告をした場合に適用される税額控除を意味します。
例えば、国内株式の配当は、通常、法人税が課された後の利益を株主に分配するものですが、ここにさらに所得税が課されると二重課税になってしまいます。
これを排除する意味で、税額控除として設けられたものが配当控除です。
総所得が1000万円以下の場合、配当所得に対して所得税は10%、住民税は2.8%が算出税額から差し引くことができます。
一定の公募国内株式投資信託の収益分配金についても配当控除の適用がありますが、配当控除率は最高でも国内株式の配当金の半分となります。
【総合課税で申告すると得をするケース】
2017年度の税制改正の後、上場株式の配当にかかる所得税と住民税で、異なる課税方式を選択することにより節税する方法が注目されています。
税務署への確定申告と自治体への届け出が必要ですが、税金を減らせる可能性が格段に高まります。
年金生活者や自営業者であれば社会保険料の負担が軽減することもあります。
新しい税制では、株式の配当は所得税(国税)と住民税(地方税)が別々に課され、それぞれ有利な課税方式を納税者が選択できる仕組みになっています。
1.配当を含めた課税所得が900万円以下
2.配偶者控除などの適用を受けており、配当以外に所得がない(専業主婦など)
3.株式の利益や配当所得などの合計が38万円以下(申告しても扶養から外れません)
【総合課税で申告すると損をするケース】
1.配当を入れた課税所得が900万円を超える
2.配偶者控除などの適用を受けており、配当以外に所得がない(専業主婦など)
3.株式の利益や配当所得などが38万円を超える(申告すると扶養から外れます)
総合課税を選ぶと、累進課税の税率となり、所得が多いほど、税率も高くなります。
給与と配当を合わせた所得金額が695万円以下の場合は、総合課税で確定申告すると、配当金の税率が下がります。
「源泉徴収あり」で税金を取られる場合と比較して具体的な事例を見てみましょう。
1年間の所得が330万円以下 | 所得税 0% | 住民税 5% | 合計 5% | 15%お得! |
1年間の所得が330万円超~695万円以下 | 所得税 10% | 住民税 5% | 合計 15% | 5%お得! |
1年間の所得が695万円超~900万円以下 | 所得税 13% | 住民税 5% | 合計 18% | 2%お得! |
※表は復興税率0.315%を除きます。
もし、確定申告しなければ、特定口座で源泉徴収ありと同じく差し引かれる税金は20.315%です。
逆に、所得金額が900万円を超える場合は、総合課税で確定申告をすると、源泉徴収される20.315%よりも多くの税金を払うことになるので注意してください。
株式の配当金の納税方法で、申告分離課税として確定申告することを選んだ場合
申告分離課税を選ぶことで、株式・ETF・投資信託による売却損失と損益通算ができます。
売却損失が発生しているケースでは非常にお得な納税方法です。
申告分離課税で申告すると得をするケース
株式やETF、株式投信による売却損がある
申告分離課税で申告すると損をするケース
配偶者控除などの適用を受けており、株式の利益や配当所得などが38万円を超える
(申告すると扶養から外れます)
申告分離課税を選ぶことで、節税ができるメリットがあることを覚えておきましょう。
「一般口座・特定口座」「源泉徴収あり・なし」に関係なく確定申告はお得
株式による売買の損失は、特定口座で源泉徴収ありを選んでいたとしても、確定申告をすることで、3年間繰り越すことができます。
譲渡益+譲渡損による損益通算
株式・ETF・投資信託による売却損失は、確定申告をすることで最大3年間繰り越しできるのです。
確定申告をして、利益と損失の1年分に関する損益を相殺した後も、マイナス分がまだ残っている場合が多くあります。
一つの証券会社で損益通算によって3年間の繰越控除をする場合
まずは、一つの証券会社だけで取引している場合を想定してみましょう。
例えば、2018年に100万円の利益が出ていたとします。しかし、損切で170万円の損失を確定した場合、70万円の損失が残ってしまいます。(100万-170万=-70万)
その70万円は、2019年と2020年の確定申告を通じて、損益通算できます。
2019年に80万円の利益を出し、2020年に90万の利益を出したとします。
すると、-170万(2018年)+80万(2019年)=-90万(2018年+2019年の合計)
-90万(2019年)+100万(2020年)=+10万(2019年+2020の合計)が最終的な利益となります。
つまり、70万の損失分は、70万円を超える利益を出して相殺できるまで、3年間は繰り越せるのです。
複数の証券会社で損益通算によって3年間の繰越控除をする場合
SBI 証券で230万円の利益(譲渡益)を出しました
マネックス証券で-350万円の損失(譲渡損)を出しました
楽天証券で120万円の利益(譲渡益)を出しました
こうしたケースでは、全ての利益と損失を合計(相殺)すると、±0円となります。
SBI 証券とマネックス証券では、利益の20.315%=71万1025円が税金として自動的に差し引かれます。
ここで何も手を打たなければ、楽天証券で-350万円という大きな損失を出しているのに、71万1025円を税金として納付しなければなりません。
これではSBI 証券と楽天証券で利益を出したとしても、非常に「もったいない」ですよね。
こういう場合にこそ、確定申告が役に立ってくれるのです。
確定申告を行えば、マネックス証券の-100万円の損失を相殺できるまで、3年間は繰り越すことができます。
配当金+譲渡損による損益通算
上記のような譲渡益+譲渡損の相殺だけではなく、譲渡損+配当金の相殺もできます。
1年間の配当金所得が80万円で、譲渡損が60万円出たとします。
一般的に配当金の80万円にかかる税金はです。
80万円×20.315%=16万2520円
ここで、確定申告をすれば、60万円の譲渡損を出しているので、課税対象になる利益は80万円ではなく20万円となります。
80万円-60万円=20万円
譲渡損+配当金の相殺によって課税対象は20万円となるので、約4万円まで減らせるのです。
10万円×20.315%=40630円
確定申告をすれば、16万2520円-40630円=121890円の節税をすることが可能となります。
こうして、納め過ぎた税金が戻ってきます。
譲渡損と配当金の損益通算は上場株式配当等受領委任契約で
譲渡損と配当金を損益通算するには、原則として確定申告が必要です。
もし、確定申告の手間を省きたい場合は、特定口座で源泉徴収ありを証券口座の開設時に選ぶだけでなく、上場株式配当等受領委任契約を結ぶようにしてください。
この契約を結ぶことで、特定口座の中に配当金を受け入れることになります。
そうすれば、確定申告を行わなくても、特定口座における譲渡損と配当金を自動的に損益通算してくれるのです。
まずは、特定口座で源泉徴収ありの口座を開設し、届出書などに必要事項を記入して郵送することで手続きを完了することができます。
※証券会社により契約の仕方が異なるケースがあります。