世界の自動車市場では、電気自動車(EV車)への移行が一斉に動き出しています。
この大変化をもう誰も止めることはできないでしょう。
EV車へのシフトに対して、日本の各自動車の部品メーカーは、「エンジンがなくなる」という危機感を抱いています。
その中にはもちろん、従業員数が数万人を超える超大手企業もあります。
「動力がエンジン」→「モーターに切り替わる」=「7000の精密な部品がいらなくなる」
この事実を、戦々恐々として受け入れ始め、次なる対策に追われているようです。
エアバックを扱う会社であるタカタが、2017年6月に負債総額1.7兆円で経営破綻し、瞬く間に上場廃止になったように、いつ何が起こるか分かりません。それだけ、今は大きな時代の大転換期に入っていることは間違いなさそうです。
実は、EV化の流れがエンジンの部品メーカーに強いプレッシャーをかけているのは、環境問題を起点とする実需だけが原因ではありません。証券会社が投資家向けにリポートを公表し、EVシフトが進むことで、従来型の部品メーカーが30%の売り上げ減少につながることを示唆するなど、金融の世界でも投資家がEV化を推し進める企業に投資を促すような活動を展開しつつあるのです。
それによって、アナリストによる格付けが下がったり、投資家が買いを手控えるなどといった、財務面での不安、すなわち資金繰りにも影響を与える可能性が生じています。
EV化によって「エンジンからモーターへ」と自動車の動力源が変わると、エンジン部品に限らず、排気管を含め、他のほぼ全ての部分に影響を与えるのです。
これは、自動車製造にとって、過去に蓄積してきた100年間のノウハウが根本的に変わっていくことを意味します。
2017年10月27日~11月5日にかけて、東京モーターショーが開催されます。
このイベントでは、EV車が大きくクローズアップされて自動車の技術の進歩と未来に対する期待感を抱かせる自動車が数多く登場することでしょう。
2016年~2017年にかけて、ヨーロッパと中国で、電気自動車へのシフトを加速していくことが大々的に報道されました。
今回の東京モーターショーでは、変化の波を一目見ようとする人達がたくさん訪れることでしょう。過去最大の入場者数は第29回、1991年の時で、200万人以上が来場しました。バブル絶頂の気分がまだ抜け切っていない、懐事情が温かい人が多かった、ということも影響していたのかもしれません。
東京モーターショーは、2年に1度のペースで行われるのですが、前回の2015年は81万人が来場しました。消費増税から1年後であったり、チャイナショックの直後であったりと、景気的には冷え込んでいる時期でしたが、やはり代替エネルギー車や電気自動車が注目を集めていました。
この2年の間に、どれだけ各企業がEV化への加速を増しているのか、どれだけ従来の発想を転換して、自動車に対する新たな戦略を練っているのか、その真価が問われるイベントであることは間違いありません。
そしてそれは、国内消費だけでなく、海外における国際競争力の是非をも問う重要なターニングポイントになり得ると考えています。
もちろん、時代の波を柔軟に受け入れて、部品開発のレベルでもEV車を事業の中心に据えて取り組んでいる企業も増えてきています。
それは、人事の面で際立って現れており、エンジン製造に携わるであろう機械系専攻の学生を減らし、電子工学専攻の学生を増やしていることからも伺えます。
また、エンジンからモーターに必要な部品開発を進めていくことは大切ですが、EV車のモーターは、エンジンに比べて部品の数量が減ることになります。
つまり、部品メーカーはモーター用技術開発に加えて、これまで以上に新規の顧客を開拓をしていかなければならない岐路に立たされているのです。
EV関連の電子部品に強いこと、それを欲しいと思う自動車メーカーを増やすことが、こうした企業の成長の鍵を握る時代に入っています。
実例として、ホンダは2030年までに世界販売台数の3分の2を電動車とし、その内の15%をEVと燃料電池車が占めるという目標を設定しています。
電動化に寄与する部品を数多く手がけている企業にとっては、他社への売り込みを拡販していく追い風に乗りやすくなりますが、先行的な設備投資を伸ばせず、こうした変化に対応できない企業にとっては、業界再編の波に身を委ねざるを得ない状況も考えられます。