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HitBTC取引所から見える仮想通貨市場の光と影




HitBTC取引所から見える仮想通貨市場の光と影

 

今年中に「一般金融機関」の仮想通貨事業参入という事態が現実味を帯びています。既存の金融事業者のうち約20%がそれを検討しているのです。最近のアルトコインの軟調ぶりとは裏腹に、ゴールドマンサックスやJPモルガンなど世界的な金融グループが着実に本格的な運用を考えているのは間違いないです。

国内の上場企業においても、仮想通貨取引所への参入を表明しています。

マネーフォワード、ドリコム、アドウェイズ、やまねメディカル、エイベックスなどが挙げられます。

中でも、やまねメディカルは介護、福祉系の企業なので、そのインパクトは極めて大きいものがあります。

将来性、社会性、収益性などを考慮し、仮想通貨の分野に加わるという判断をこうした企業はしたのです。

その一方で、日本における行政レベルの規制は一段と厳しくなっています。

こうした規制を受けて、HitBCT(取引高世界7位)という海外の仮想通貨取引所は、6月に入ってすぐ、日本からのIPアドレスの口座を取引停止にするという発表を行いました。出金は今後もできるようですが、売買は2週間ほどで停止となる模様です。この取引所は、2013年にイギリスで設立された仮想通貨取引所で約5年の歴史があります。

HitBCTは、価値があるのかどうか分からないコインが数多く上場していると指摘されています。

真っ当なビジネスモデルを持たない組織や会社が、資金調達のためにICO(トークンの発行)を行う、といった詐欺的な事態をなくしていこうとするのが金融庁の意図だと思われます。

これは、良い意味では、浄化作用であり、真に優良な仮想通貨、価値のあるコインだけが生き残っていくと言えます。

その一方、悪い意味では、取引所に上場しているアルトコインが単に時価総額が小さい、知名度が低いというだけで、過度に売られすぎる事態も発生しています。

それでは、仮想通貨を売買して、短期間で億り人になるという個人投資家の夢は立ち消えになってしまうかもしれません。そうしたチャンスは、昨年の2017年までに投資した人だけに与えられた特権的なチャンスだった可能性もあります。

コインを発行し、運営する側には、社会的、同義的な責任が問われるだけでなく、多くの利害関係者(ステークホルダー)の立場を考えて行動する姿勢が求められます。

誇大広告を行ったり、信憑性のない内容を、安易に情報発信することは出来にくくなるのです。

それを踏まえると、悪意を持った詐欺的なコインの発行者から個人投資家が身を守りやすくなる、という傾向は出てくることでしょう。

仮想通貨投資における安全性を優先するか、大きな利益を優先するか、は、じっくりと議論すべきテーマだと言えます。

少なくとも、価値のない形だけの仮想通貨、コインは姿を消していくか、取引が出来なくなることになるでしょう。日本は2017年4月に施行された改正資金決済法によって、仮想通貨は一般的な貨幣と同等の財産的価値を持ち、政府によって「通貨」として認められることになりました。

銀行や証券会社などの金融機関も、仮想通貨を扱えるようになったのです。

この法律は、キャッシュレス化を促進し、「将来のお金の形を変えるかもしれない」とも言われています。

「仮想通貨の可能性は広がるばかり」、と読んだ人たちは、ビットコインやイーサリアムに多額の投資を行い、1年ほどで数千万~数億円を稼いだ人も多いようです。

そうした状況が、「仮想通貨は儲かる」という風潮を生み出しました。

ところが、その強い欲求を逆手に通った悪質業者が、過度な宣伝や事実と異なる謳い文句によって詐欺的なコインを発行する、あるいは、仮想通貨を利用した情報商材ビジネス(自動売買ツールなど)を販売するという被害を拡大させることにもつながりました。

現在、消費者相談センターには、ひっきりなしにこうした悪質案件の被害が報告されており、被害に遭った方々の返金請求に応じるべく努力されています。

私たちは、「儲けたい」という欲求に振り回される前に、情報の正確性とビジネスモデルを見極める眼力を養う必要があります。

ただし、これは相当に難しいことです。他人事であればすぐに可笑しいと思えても、自分事になると、冷静に判断できなくなってしまう場合が多いのです。

その背景には、人生には色んな悩みが起こり、様々な心の苦痛を抱えている経験が存在しているからです。

こうした意味においても、現実を生きることの舵取りは難しいものです。

お金を短期的に手っ取り早く稼ぐことで、苦しみや悩みをなくしたい、早く楽になりたい、人生の選択肢を増やしたい、という思いに駆られてしまうのです。

少しゆっくりと時間を取って、気持ちのゆとりを保ち、急ぎ足でアクションを起こすことを自制していくことが望ましいのでしょう。

それだけ、自分を追い立てる出来事が次から次へと起こるのが人生なのかもしれません。

メンタル面の健全性、精神的な余裕、安らぎ、幸福感は、仮想通貨投資で失敗しない、着実に成功を収めるための必須条件だと言えます。

これからも、仮想通貨に関する有益な情報は数多く出てくることでしょう。客観的に物事を捉える洞察力を磨きながら、私自身もお役に立てる情報を発信していきたいと考えています。

(追記)日本からのIPアドレスの口座売買禁止からしばらく後に、HitBCT取引所は日本への進出について声明を発表しました。HitBCTは日本でサービスを提供するため、日本法人の設立を準備している、というのです。

HitBCT取引所は、日本に子会社(2018年7~9月)を設立し、世界でも有力な日本の法律事務所と協力関係を構築しようとしています。

安全でない仮想通貨は基本的に除外したい日本の金融庁は、海外の取引所を牽制したいという意向を持っています。HitBCT取引所のこうした動きに対して、金融庁がどういった対応をするのか、非常に注目すべきところです。おそらくは、仮想通貨市場の地合いにも影響を与えることでしょう。好意的であればプラスに、否定的であればマイナスに市場が大きく揺れる展開となりそうです。



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